こんにちは、ほしくずです。
特別養護老人ホームが、終の棲家としての役割を担うようになって久しい。施設で最期までその方らしく、生ききることができる場所として、その期待を受けながら介護は成長してきたのだと思います。
それは、単に社会保障制度の一端としての役割だけでなく、ご家族の介護負担を軽減するというだけのものでもなく、ご利用者自身が、生きることに楽しみを持ち、自身の生きる力を支えながら、人生の最期の時まで丁寧に関わらせていただくことに、責任とやりがいを感じながら介護に携わってきた結果であると考えます。
昨今は、『慢性的な人手不足』や『新型コロナウイルス』などの話題が中心となり、職員の待遇改善やクラスター発生状況などばかりに目が向けられてしまっていました。そのような状況下で、施設としても創意工夫が求められる反面、施設のサービスの質はどのように変化してきたのか考えてみたくなるわけです。
存在意義(パーパス)とは
パーパスとは、会社の存在意義や社会に果たすべき役割を表す言葉です。
近年では、会社や事業所が「パーパス」を積極的に発表・策定する動きが見られるようになりました。
「パーパス」は、会社や事業所の存在意義や社会的な役割などと訳され、社会やサービスを受ける側に対して、どのような価値を提供するのか、そこで働く人たちは、何のために働いているのかを分かりやすい言葉で表したものです。
パーパスを重要視するが85%
人材採用サービス会社「ウォンテッドリー」が、今年4月に仕事を探す学生や転職希望者などを対象に、インターネットで調査を行った結果が発表されました。
1340人から回答を得たアンケートの中の「これから就職・転職する際パーパスをどの程度重視するか」との質問に対して、
「かなり重視する」・・・36%
「そこそこ重視する」・・・49%
「重視する」と回答した人が85%に上りました。
働く人たちが、いかにパーパスに注目しているかがわかると思います。
施設の存在意義(パーパス)の重要性
これから高齢化はますます進む一方で、現役世代が急速に減少していく時代がやってきます。そのような中では、いかに自分たちが働く環境の中で、施設の存在意義(パーパス)を実感し、介護の仕事に魅力を感じ、やりがいを持って介護に関わっていけるのかが、施設が生き残っていくためには、大切なのだと感じます。
施設の存在意義を構築する5つの視点があります。
存在意義(パーパス)を構築する5つの視点
1,ご利用者の声、希望・要望
2,ご家族からの意見・要望
3,施設の方針・考え方
4,地域との関わり
5,職員からの提案・アイディア
1,ご利用者の声、希望・要望
ご利用者の声に耳を傾けることは、介護の基本です。実際の会話の中から導き出されるニーズはもちろん、たとえ認知症や寝たきりであっても、その行動や表情から、ご利用者の声なき声に気づき、それに応えていくことこそ、介護という仕事の醍醐味です。
ただ介護を必要とする人が集まる場所ではなく、そこで生活しているということを理解し、出来る限りその方が望む姿や生き方を支えていけるかが、私たちの役割なのです。
2,ご家族からの意見・要望
ご利用者のご家族は、「入所させてもらっている」「お世話になっている」という気持ちから、意見や要望を伝えにくい心理状態になりやすくなっています。そこに胡坐をかいて、施設の職員主体の考え方や介護になってしまうのはとても危険です。
入所している方がどのように過ごしてほしいのか、ご家族として何をしてあげられるのかを一緒に考えていく必要があります。そういう意味では、苦情にもきちんと耳を傾けることも重要になってきます。
ご家族のお気持ちにも十分に配慮しながら、たとえ入所していても、最期まで家族として関われる支援をしていくことが大切です。
3,施設の方針・考え方
施設の管理者や主任などが、措置時代から選択の時代に変わったことにより、施設の理念や方針や接遇の重要性について理解をし、それを伝えてきたのかが重要です。
古き良き時代の名のもとに、旧弊の介護をいつまでも引きずっているようでは、これからさらに加速するであろう時代の変化に対応できなくなってきてしまいます。
自分たちが、どんな施設を目指すのか、どんな施設にしたいのか、その「目的」を明確にし、「目標(課題)」を持って介護を発展させていくことが重要です。
4,地域との関わり
施設も地域の中にひとつの住居です。地域に開かれた施設として、草取りや廃品回収などの町内活動等への参加やボランティアの受け入れを行っていくことで、地域とのつながりができます。
地域とともに考えていくことで、地域のニーズに沿ったサービス提供を行ったり、逆に地域の方から施設の行事に協力して頂いたりすることで、自分たちに何が求められているのか、施設の在り方や立ち位置を確認することにつながっていきます。
5,職員からの提案やアイディア
ご利用者のために考えること、施設を良くするために行動すること、施設の存在意義(パーパス)にとって一番重要な視点であります。ご利用者の代弁という部分はもちろん、職員のやりがいにつながるご利用者の笑顔や、職員自身が仕事を楽しむことや遊び心も含まれるからです。
自分たちの施設を自分たちで良い方向へ向かわせることやご利用者の生活の質(QOL)の向上につながるアイディアは、「自分たちで考えて行動できる」ということになります。
停滞する施設には、これがありません。
毎日同じことの繰り返しでは、ご利用者もメリハリのない生活になりますし、職員の働くやりがいや介護の魅力に気づかないまま、単純に業務をこなすことになってしまいます。自分たちでつまらない仕事にしてしまうだけでなく、ご利用者に楽しみや喜びを感じてもらうこともできなくなります。
存在意義(パーパス)を自信を持って伝えられること
施設の存在意義(パーパス)が、単に法律上の基準に定められている内容を守り、生活に必要な最低限のケアをマニュアルに従って行っていればいいという施設も多いです。しかし、そんな施設にご利用者や職員が魅力ややりがいを感じて集まってくるわけがありません。
これからは、どの業界でも慢性的な人て不足が起こってきます。そんな中で、魅力ややりがいが感じられない施設からは、有能な人間や介護に対して真剣な人間は離れていくでしょう。
施設の管理者や役職員が、自施設の存在意義(パーパス)とは何かをご利用者や家族、職員に胸を張って話すことができる。
そんな施設を作り上げていくことが求められているのだと思います。