こんにちは、ほしくずです。
皆さんの施では、指針の管理がきちんとできていますか?
介護老人福祉施設(特養)では、施設運営が適正に実施していくために、「身体拘束」や「事故発生防止」などに関する指針の作成が必要となります。おそらく皆さんの施設でも、作成されていると思います。
しかし、「実地指導」や「監査」の案内がきた時に確認すると...
指針が作成されていなかった、あったと思ってたら実際はなかった
指針はあったけど、施設の現状や最新の制度にあった内容になっていなかった
などの状況になってしまうことがあります。
「指針」は、その事柄についての施設の基本的な考え方や姿勢を示している重要なものであり、その管理や内容の確認は生活相談員が行っていることが多いと思います。
ただでさえ、忙し中で「指針」を最初から作成したり、ひとつひとつ見直しをしていくのは、とても大変ですよね?
そこで、今回は「身体拘束廃止及び高齢者虐待防止に関する指針」について、「実地指導」や「監査」で確認される内容を踏まえた形で、提供したいと思います。
細かな部分については、施設の実情に合わせて変更して頂く必要がありますが、それ以外の部分については、そのまま活用できるようにしてみましたので、ぜひご活用ください。
身体拘束廃止及び高齢者虐待防止に関する指針について
「身体拘束廃止及び高齢者虐待防止に関する指針」は、適切な入所者処遇の確保の中の身体拘束「身体拘束等の適正化」についてという項目で求められるものになります。
この中では、「身体拘束等の適正化のための指針の整備」とされていますが、身体拘束は原則高齢者虐待にあたるとされていることから、今回作成した指針の中には「高齢者虐待」に関する項目を含めさせて頂きました。必要に応じて修正してください。
身体拘束等の適正化のための指針で、必要とされる内容は以下のとおりです。
指針に必要な項目
①施設における身体拘束的適正化に関する基本的な考え方
②身体的拘束適正化委員会その他施設の組織に関する事項
③職員研修に関する基本方針
④身体的拘束等の報告方法等のための方策に関する基本方針
⑤発生時の対応に関する基本方針
⑥入所者等に対する指針の閲覧に関する基本方針
⑦その他身体的拘束等の適正化の推進のために必要な基本方針
以上の内容が含まれていることが必要です。
身体的拘束廃止に関する基本的な考え方
身体拘束は利用者の生活の自由を制限することである。また、利用者の尊厳ある生活を阻害するものである。
したがって当施設では、利用者の尊厳と主体性を尊重し、身体的拘束をはじめとするあらゆる拘束を安易に正当化することはしない。職員一人一人が身体的、精神的弊害を理解し拘束廃止に向けた意識を持つこと、身体拘束をしないケアを見出すことに努めること、利用者が安心して生活でき るように環境を整えていく。
身体的拘束は、原則として高齢者虐待にあたることを理解し、身体的拘束ゼロを目指す取り組みを実施・継続していくために、この指針を定める。
介護保険における指定基準に関する身体拘束の規定
平成11年厚生省令第39号「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」の中の第11条4項において「施設サービスの提供に当っては、当該入所者又は他の入所者の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体拘束その 他入所者の行動を制限する行為(身体拘束)を行ってはならない。」とされている。
身体拘束にあたる具体的な例
① 徘徊しないように、車椅子やベッド等に体幹や四肢を紐等で縛る。
② 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひもなどで縛る。
③ 自分で降りられないように、ベッドを柵で囲む
④ 点滴・経管栄養などのチューブを抜かないように、四肢を紐などで縛る。
⑤ 点滴・経管栄養などのチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
⑥ 車椅子や椅子からずり落ちたり立ち上がったりしないように、Y字型拘束帯や腰ベルト、車椅子テーブルをつける。
⑦ 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を用意する。
⑧ 脱衣やオムツはずしを制限するために介護衣(つなぎ服)を着せる。
⑨ 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢を紐などで縛る。
⑩ 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
⑪ 自分の意思で開けることのできない居室などに隔離する。
身体的拘束適正化委員会の設置
①身体的拘束適正化委員会は、3か月に1回以上開催することとし、身体的拘束の発生や終了に関する事項がある場合には、必要に応じて随時開催すること。
②身体的拘束適正化委員会は、高齢者虐待防止に関する事項についても検討をすること。
③身体的拘束適正化委員会は、上記結果を集計・分析を行い施設長・管理者に報告する。
研修の実施
身体的拘束の適正化等に関する研修について、身体的拘束に関する正しい知識や廃止に向けた考え方について理解を深め、身体的拘束ゼロに向けた取り組みを実施していくことを目的に、年に2回以上の研修を実施する。
緊急やむを得ない場合の例外三原則について
利用者個々の心身の状況を勘案し、疾病・障害を理解したうえで身体拘束を行わないケアの提供することが原則。しかしながら、以下3つの要素の全てを満たす状態にある場合は、必要最低限の身体的拘束を行うことがある。
切迫性 | 利用者本人又は他の利用者等の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと。 |
非代替性 | 身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと。 |
一時性 | 身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること。 |
身体的拘束の発生に関する手続き
身体的拘束の実施については、「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの要件を満たし、かつそれらの要件の確認等の手続きが、極めて慎重に実施された場合のみ限られる。
「緊急やむを得ない場合」の判断については、当該部署の責任者及び施設長の合意の下で行う。その上で、身体拘束適正化委員会において、十分に協議する必要がある。職種や個人による個別的な判断は行わない。
利用者及び家族に対しては、身体拘束の内容、目的、理由、拘束の時間、実施す る期間を十分に説明し、理解を得るように努める。
身体拘束の実施については、その経過観察及び経過記録を記載し、1か月に1回は、身体拘束の廃止に向けた会議を実施する。
高齢者虐待に関する基本的な考え方
2006年(平成18年)4月に『高齢者虐待の防止・高齢者養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)』が施行された。
虐待は人がその人らしく、尊厳をもって生きていくことを阻むすべての行為である。いかなる状況であろうとも、人が尊厳を持ち、自分らしく生きていくという基本的な権利は脅かされてはならない。
高齢者虐待の防止のための取り組みは即ち利用者の人権を守るための取り組みであることを理解する必要がある。施設のご利用者の虐待防止に係る責務は、単に法律の内容を周知し、形式的に体制を整え、虐待行為またはそれを疑われるような行為の禁止を指示するだけで充足されるものではなく、利用者の虐待に至るまでの段階として存在するであろう「不適切なケア」を行わないようにする。
またその不適切なケアを生み出したり放置したりするような背景があればそれを改善する。利用者の人権を守る、適切なケアを提供できる環境を整えることを基本的な考え方としてこの指針を定める。
高齢者虐待の定義
高齢者虐待を『高齢者が他者から不適切な扱いにより、権利利益を侵害される状態や生命・健康・生活が損なわれるような状態に置かれること』と広く捉える。
高齢者虐待の分類
①身体的虐待:利用者の身体に外傷が生じ、又は生じる恐れのある暴行を加えること。
②介護の放棄:放任、利用者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、その 他の利用者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること。
③心理的虐待:利用者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、その他の利用者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
④性的虐待:利用者に猥褻な行為をすること。又は利用者をして猥褻な行為をさせること。
⑤経済的虐待:利用者の財産を不当に処分すること。その他利用者から不当に財産上 の利益を得ること。
身体的拘束廃止及び高齢者虐待防止に関する基本方針
(1)法と法の精神の遵守
高齢者虐待防止法を遵守するのはもちろん、その精神の基本である「尊厳の保持」を遵守する。
(2)高齢者虐待の予防
虐待につながる不適切なケアの防止と改善
・法人は定期的に職員に対して虐待の防止に関する教育・研修を実施する。また組識としてその仕組みづくりを行い徹底する。
(3)高齢者虐待行為の早期発見
日々の利用者の変化に気づき、不適切なケアを黙認せず、虐待の兆候を早期に発見するよう努めるとともに、ひとりひとりの気づきを声に出し、速やかに当該フロア会議等を開催してその状況を分析し虐待の有無を検証する。
(注:高齢者虐待防止法第 5 条第 1 項)
(4)当法人においては、高齢者虐待と同様に、緊急やむを得ない場合であって「切迫性」「非代替性」「一時性」の要件に該当する場合を除き、いかなる場合においても身体拘束を行なわないケアを行う。
苦情・ご意見に対する対応について
施設内における虐待の防止を徹底するために、法人内の各事業所は利用者及びその家族等からの苦情やご意見について真摯に受け止め、これを速やかに解決するよう最大限の努力をする。
(注:高齢者虐待防止法第20条)
施設長の責務
施設長及び管理者は、苦情処理体制を整備するとともに、職員に対する身体的拘束廃止及び高齢者虐待防止のための研修の実施、虐待防止の各種措置を講ずる責務を負うとともに、保険者に通報責務を負うものとする。
職員から施設内外における虐待を受けたと思われる利用者及びその疑いがある案件の報告を受けた場合は、速やかにこれを検証し、法人専務理事に報告の上保険者に通報(義務)する。またこの通報を行った職員に関し、そのことを理由に解雇・その他不利益な取り扱いは行われない。
(注:高齢者虐待防止法第21条第1項)
(注:高齢者虐待防止法第21条第6項)
利用者等に対する当該指針の閲覧について
①当該指針は求めに応じ、いつでも閲覧できるように文書の掲示する。
②当該指針は全職員に配布し、周知徹底を図ると共に定期的に研修を行う。
身体的拘束廃止及び高齢者虐待防止に関する指針まとめ
今回は、身体的拘束廃止及び高齢者虐待防止に関する指針についてまとめてきました。
「身体的拘束」や「虐待防止」については、原則行わないこと、事前に防止することが求められています。この指針については、監査等に必要なものではありますが、全職員が理解し、実践することが一番重要です。
身体的拘束ゼロ、虐待が起こらない施設の運営のために、きちんとした取り組みを行っていきましょう。