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介護施設における看取り介護の実践:法定研修の重要性と今後の展望

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ほしくず

生活相談員(社会福祉士,介護福祉士,介護支援専門員,実習指導者) デイサービス、ショートステイ、特養の生活相談員を15年以上経験して感じた相談員の楽しさ、業務に役立つ情報、楽しく働くコツをわかりやすく解説。現役だから分かる仕事のテクニックや情報をお届けします。

 近年、日本の介護施設において「看取り介護」と「ターミナルケア」が大きく注目されるようになりました。

 かつては自宅で亡くなる方が多く、約8割が家庭で最期を迎えていましたが、医療の発展とともに「病院で亡くなる」という流れが進みました。

 しかし、近年では「最期を家庭や施設で迎えたい」というニーズが再び増えつつあります。この記事では、介護施設で行われる看取り介護とターミナルケアの違い、法定研修の重要性、そして施設での看取りにおける実践ポイントについて詳しく解説します。


介護施設における「看取り介護」と「ターミナルケア」の役割の違い

看取り介護とは

 看取り介護とは、利用者が「その人らしい最期」を迎えられるよう、日常生活の支援を行うケアです。人生の最終段階における利用者の尊厳を守りながら、心身の苦痛をできる限り和らげ、穏やかに過ごしてもらうことを目的としています。看取り介護では、延命治療に固執せず、利用者が自然に命を全うするまでの見守りや支援が中心となります。

特に、以下の3つが看取り介護の特徴です。

  • 尊厳を守る:利用者の生き方を尊重し、本人のペースに合わせて最期まで支援を行います。
  • 家族との絆を大切にする:家族が納得し、安心できるよう支え、最期の時間を共に過ごせるよう配慮します。
  • 心身の苦痛の緩和:医療的処置ではなく、生活の中で自然に和らげるケアを行います。

ターミナルケアとは

 ターミナルケアは、病気が進行し、死期が迫っている方に対して、専門的な医療や看護を提供するケアです。

 医療行為を中心に痛みの緩和や症状の管理を行い、終末期を支えることが目的です。医師や看護師が主に対応する医療的なケアが主体であり、生活支援に重点を置く看取り介護とは異なります。

看取り介護とターミナルケアの違いを理解する意義

 看取り介護とターミナルケアの最大の違いは、「医療行為を中心とするか」「生活支援を中心とするか」にあります。この違いを明確に理解し、施設での利用者一人ひとりに合ったケアを提供することが重要です。


法定研修で学ぶ「看取り介護」の基本:共通理解と実践力の向上

 介護施設で質の高い看取り介護を提供するためには、職員全員が共通の認識と適切な知識を持つことが不可欠です。法定研修では、看取り介護に関する基本的な理解を深め、以下のような3つの段階に沿って実践力を養います。

1. 自分の「死生観」を理解する

 自身の死生観を知ることは、看取り介護を行う上で大切な出発点です。死に対する考え方は人それぞれ異なり、介護職員自身も日頃から死生観に向き合い、自分がどのような最期を望むのかを考えることが大切です。この過程を経ることで、利用者や家族に寄り添い、丁寧に対応できる基礎が身につきます。

 特に、以下のような問いかけが自分の死生観を深めるきっかけとなります:

  • 自分自身が最期を迎えるとしたら、どのような状況で過ごしたいか
  • 家族や親しい人が死を迎える際に、どのように関わりたいか

2. 施設全体での「看取り介護」への共通認識を持つ

 次に、介護施設全体で看取り介護への共通認識を持つことが重要です。看取り介護を行う際には、個々の職員の考えだけでなく、施設全体の方針として一貫した姿勢が求められます。研修では、以下の内容に関して職員全体で理解を深めることが推奨されています。

  • 看取り介護の指針・マニュアル:施設内の方針や看取り介護の基本的な姿勢を確認し、職員間で理解を共有します。
  • ガイドラインの理解:厚生労働省が定めた「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」をもとに、最期のケアに対する基本的な方針を確認します。

 このようにして、施設全体で統一された看取り介護の基準を持つことで、職員間でのばらつきを防ぎ、一貫したケアが実現できます。

3. 実践力を高めるための事例検討

 法定研修の最後の段階として、事例検討を通じて実践力を高めることが重要です。実際に起こり得る場面を想定し、食事支援や活動内容、家族との関わりなどを話し合いながら、適切な対応方法を検討します。

 研修内での事例検討では、以下のようなポイントに注意しながら進めます。

  • 多様な意見を引き出す:職員が自分の意見を自由に話せる環境を作り、さまざまな視点を共有します。
  • 否定的な意見は避け、建設的な議論を行う:看取り介護の実践においては、異なる意見が出ても肯定的に受け止め、より良い方法を模索します。

 事例検討を行うことで、職員間での共通理解がさらに深まり、具体的なケアの流れや対応力が向上します。


多死社会の到来に備える:介護施設での看取り介護の重要性

 現在、日本は多死社会と呼ばれる時代に突入しており、厚生労働省の統計でも死亡者数が増加傾向にあります。

 今後、病院だけでなく介護施設が「最期を迎える場所」として重要な役割を果たすことが期待されています。こうした時代背景からも、看取り介護の充実がますます求められるようになるでしょう。


介護施設での看取り介護加算の意義と評価

 2021年の介護報酬改定では、看取り介護加算に新たな評価枠組みが追加されました。従来の死亡直前の対応に加え、死亡の45日前からの取り組みも評価対象となり、施設での看取りが制度的にサポートされています。これにより、看取り介護の取り組みをさらに進めるための基盤が強化されました。


まとめ:看取り介護における研修の重要性と実践のポイント

 介護施設での看取り介護の質を高めるためには、法定研修を通じて基礎知識を深め、実践力を養うことが不可欠です。利用者が尊厳ある最期を迎えられるよう、職員一人ひとりが死生観に向き合い、施設全体での共通認識を持つことが求められます。また、事例を通じての実践的な研修は、看取り介護における具体的な対応力を高めるのに役立ちます。

 ぜひ、この記事を通じて得た知識をもとに、看取り介護についてさらに理解を深めていきましょう。

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