こんにちは、ほしくずです。
介護施設の研修担当者必見。
こんな方におすすめ
・事故防止に関する研修担当になったけど、どんな研修にすれば良いのか悩んでいる
・研修の資料を一から作る時間がない
・事例検討を含めた研修をしたい
今回は、介護事故防止に関する研修「介護事故を防止するリスクの把握~事例検討~」の研修資料になります。
この記事の内容をパワーポイントにコピペしていけば、研修資料を作成することができます。
介護事故防止は「介護事故ゼロを求めるのではなく、防げる事故を確実に防ぐことが大切!」です。
介護事故防止に関する研修動画
この記事の内容に沿った研修動画を公開しています。
介護事故防止に関する考え方について
高齢者は、その心身の状態から常にリスクと隣り合わせの状態です。
私たちが関わるご利用者は、身体の障がいや認知症の症状が見られるなど、そのリスクはさらに高くなります。
特別養護老人ホームをはじめとする入居施設は、病院とは違い生活をしていく場所です。その生活の中には回避できないリスクが必ずあります。
介護事故をゼロにすることが目的になると
介護事故を起こさないこと・全てのリスクを回避しようとすると、過度な行動抑制につながっていきます。
過剰な事故防止
・起こさない
・歩かせない
・自分でさせない
・見守る(見張る)
・制止する
「やらない、させない選択肢が優先される」になると、身体拘束につながる可能性が高まっていくことを意識しておくことが重要です。
介護事故の分類
介護事故には「介護事故」と「介護過誤」の2種類あります。
介護事故防止では、「介護過誤」つまり対応をすれば防げる事故を確実に防いでいくことが大切です。
介護事故とは
介護事故とは、施設側に過失のない事故です。
突発的な原因(日頃は問題ない、その日だけ偶然)で起きた事故や予測できない事故がこれにあたります。
例えば、普段問題なくご自分で歩行されている人が、バランスを崩して転んでしまった場合などです。
介護過誤とは
介護過誤とは、施設側に過失がある事故になります。
以前にも同様の事故があった場合や危険を感じていた(予測していた)が対策を立てていなかった場合、対策を立てていたが実行していなかった場合などがこれにあたります。
例えば、数日前から歩行にふらつきが見られるようになっていたにも関わらず、付き添いや見守りを行わず、転倒してしまった場合です。変化に気づいていたり、リスクの把握ができていたにも関わらず、それに対応していない場合は介護過誤となります。
介護事故防止のプロセス
介護事故のプロセスを図にすると以下のようになります。
この研修では、リスクの把握について事例検討を行っていきます。
事故発生防止のリスクの把握:事例Ⅰ
次の事例を読んで、考えられるリスクをあげてみましょう。
ポイント
「どんな様子」「どの状態」が「どんなリスクにつながるのか」を意識して考えてみましょう。
農家に嫁ぎ、田んぼや畑の仕事をしながら3人の子供を育てられた。子供が自立してからは、婦人会や老人会に積極的に参加していた。
3年前に自宅で転倒し、骨折して入院。以前から少しずつ物忘れが増えてきていたが、入院をきっかけにさらに物忘れが進み、アルツハイマー型認知症の診断を受ける。
お話好きであるが、自分で話したことや聞いたことをすぐに忘れてしまうため、同じ会話を繰り返されることがある。
何かに掴まれば立ち上がり可能であり、車いすからベッドやトイレへの移乗もご自分で行うことができる。排せつは希望時にトイレにお連れし、下衣の上げ下げのみ介助を行う。終わるとコールボタンを押してくれるが、ご自分でズボンを上げていることもある。
車いすを操作してご自分で移動することが可能だが、時々ブレーキのかけ忘れがあり、最近、立ち上がる際にふらつきが見られるようになってきている。
なるべく自分のことは自分でしたいという意向がある。
事故発生防止のリスクの把握:事例Ⅱ
次の事例を読んで、考えられるリスクをあげてみましょう。
ポイント
「どんな様子」「どの状態」が「どんなリスクにつながるのか」を意識して考えてみましょう。
定年まで学校の先生をしていた。定年後は、妻と旅行に出かけたり、趣味のごフルを楽しんで生活していたが、3年前に妻を亡くし、独居となる。子供は2人いるが、遠方に住んでおり、1年に1回会いに来る程度。
妻が亡くなってから外出する機会も減り、意欲低下が顕著に見られるようになってきた。今年の夏に自宅で動けなくなっているところを近所の人が発見し、救急搬送され、極度の脱水で入院となった。アルツハイマー型認知症の診断を受け、要介護認定の結果、要介護3となる。
自立歩行可能であり、居室から食堂までご自分で歩いてこられる。最近、居室の場所がわからなくなったり、昼夜逆転傾向が見られるようになってきた。トイレが間に合わず、居室内で排尿されていることもある。
食事は常食で、自分で食べられているが、痩せてきており入れ歯も合わなくなってきている。食事中に咽ることも増えてきている。
事例検討を行う際の注意点
事例検討では、なるべく多くの意見が出た方が実のある研修になります。以下の点に注意して行ってください。
事例検討を行う上での注意点
・どんな些細なことでもあげてみる
・どんな意見が出ても、否定・非難しない
・なるべく多くの意見が出るようにする
・全員が発言の機会があるようにする
リスクの把握に限らず、介護現場では「気づき」がケアの質の向上やリスクの発見につながります。
介護事故のリスクを把握するポイント
介護事故のリスクを特定するポイントは、以下の3つになります。研修で、なかなか意見が出にくい場合などには適度に助言をしながら進行していきましょう。
介護事故のリスクを把握するポイント
1,利用者本人
2,施設職員
3,設備・環境
リスクを把握するポイント1:利用者本人
身体機能の状況(麻痺、視力・聴力の低下・筋力低下)、認知症に関すること(BPSDの状況、認知症の進行具合)、日常的な習慣やご本人意向(トイレの時間、自分で歩きたいなど)を確認しながら検討していきます。
これが、利用者の状況を的確に捉えてアセスメント・ケアプランへの反映につながっていきます。
リスクを把握するポイント2:施設職員
体調管理(健康診断の実施、体調不良時の対応)、ストレス(職場の人間関係、充分な休息)、介護技術・知識(自己研鑽、読書、最新情報の把握)を確認しながら検討していきます。
体調やストレスへの対処、介護技術。知識の向上に努めることにつながります。
リスクを把握するポイント3:設備・環境
利用者に合った住環境(段差、階段、障害物など)、利用者の変化に対応(その日の体調に合った環境整備)、利用者に合った福祉用具(車いす、ベッド、自助具の選定)を確認しながら検討していきます。
利用者の変化に気づき、個々の状態に合わせた環境整備につながります。
介護事故防止に必要な視点
事故防止のために必要なのは、日常的なコミュニケーションと情報共有です。
今回の事例を通して行った事例検討で話し合ったような機会が、日常的に実施されていなければなりません。
リスクに気づいているにも関わらず「次の会議に時に検討しよう」「今日は責任者がいないから、いる日に相談しよう」などと先送りにすることが一番危険です。
リスクに対して何も対策をしていないことは、介護過誤になります。
事故発生防止に関するリスクの把握まとめ
・介護事故をゼロにすることはできないが、防げる事故を確実に防いでいくことが重要
・介護事故を防ぐためには、まずリスクの把握に努めること
・リスクに気づいたら、すぐに声に出して検討し、対応策を講じることが必要
・リスクの把握に関するポイントを理解し、気づける職員になる