今回、老人福祉法における「指導監査」を受けたので、その中身を解説していきます。
指導監査の連絡がきたのは昨年末でした。
何度か経験していても、やはり指導監査は不安になります。
・どんな準備が必要?
・何を聞かれるの?
・どこを見られるの?
準備期間はいつもこんな悩みが頭の中をぐるぐる回り続け、不安な日々が続きますよね。
この記事では、そんな不安を抱えながら指導監査の準備をしている方に向けて、実際に指導監査で確認されたことや注意点について解説していきます。
「指導監査」とは
指導監査とは、「都道府県知事、指定都市市長又は中核市市長(以下「都道府県等」という。)が、老人福祉法(昭和38年法律第133号) 第18条の規定に基づき、養護老人ホーム又は特別養護老人ホーム (以下 「老人福祉施設」 という。)の長 に対して行う指導監査に関する基本事項を定めることにより、適正な施設連営を図ることを目的」としています。
簡単にいうと、老人福祉法に基づいて
「あなたの施設は、配置基準や運営基準をきちんと満たし、ご利用者や家族、職員に適切に対応した運営をしてるか確認するね」
ってことが目的です。
「指導監査」と「実地指導(運営指導)」の違い
監査の案内がきた時に確認しておきたいのが「指導監査」なのか「実地指導(運営指導)」なのかです。
届いた通知を見れば確認することができます。「老人福祉法」なのか「介護保険法」なのかをチェックしてみましょう。
今回、私が働く施設が受けたのは、老人福祉法に基づく「指導監査」です。
介護保険法に基づく「実地指導(運営指導)」とは区別されます。
指導監査と実地指導
・老人福祉法(昭和38年法律第133号) 第18条の規定 ➡ 指導監査
・介護保険法(平成9年法律第123号)第24条の規定 ➡ 実地指導(運営指導)
個人的な感想としては、「実地指導(運営指導)」のほうが厳しいイメージがあります。
「一般監査」と「特別監査」
老人福祉法に基づく指導監査には、大きく分けて「一般監査」と「特別監査」があります。
一般監査...原則として3年に1回は、実地に全対象老人福祉施設に対し、別紙「確認項目及び確認文書」に基づき行うこととする。
健全な施設運営が行われているかを定期的に確認するのが「一般監査」です。
特別監査...以下のいずれかに該当する場合に実施されます。
ア. 施設運営に不正又は著しい不当があったことを疑うに足りる理由があるとき
イ. 最低基準違反があると疑うに足りる理由があるとき
ウ. 高齢者虐待の疑いがあるとき
エ. 一般監査によっても是正の改善がみられないとき
オ. 正当な理由がなく、一般監査を拒否したとき
運営に際し、疑念となる点が存在する場合に行われるのが「特別監査」です。項目を見ていただいてわかるように、「特別監査」がくるということは、非常にマズイ状況です。
指導監査で準備するもの
指導監査では大きく分けて「事前提出資料」と「当日会場に用意するもの」を準備する必要があります。
「事前提出資料」は、監査当日の10日前くらいまでに提出必要がありますので、まずはこちらの準備を進めましょう。
この提出した「事前提出資料」の中身に沿って「当日会場に用意するもの」の準備をしていきます。
指導監査の準備①:事前提出資料
事前提出資料とは、以下のものになります。
準備するもの
・自己点検表 ※都道府県のホームページからダウンロード
・勤務実績表(直近1ヵ月分)
・状況報告書(別紙様式2) ※都道府県のホームページからダウンロード
・パンフレット等事業所の概要がわかるもの
・平面図(上記④に平面図が含まれている場合は省略可)
自己点検表と状況報告書(別紙様式2)は、通知内に記載されているURL等からダウンロードして記入します。
その他のものは施設で準備できるものになります。
指導監査の準備②:当日会場に用意するもの
当日会場に用意するものは、以下のものになります。
チェックリストとしてご使用いただいても良いかと思います。
当日会場に用意するもの
🔲指導監査の事前提出資料
🔲人員基準関係(職員名簿、職員勤務表、タイムカード、資格証、組織図、研修記録)
🔲業務継続計画関係(計画、研修記録、訓練記録)
🔲身体的拘束関係(指針、研修記録、委員会議事録、支援経過記録、家族への説明書(同意書))
🔲事故防止関係(指針、事故記録、ヒヤリハット記録、市町村への報告書、研修記録、委員会議事録)
🔲虐待防止関係(指針、研修記録、委員会議事録)
🔲苦情関係(指針、苦情受付簿)
🔲衛生管理関係(指針、各種衛生検査記録、保健所への報告書類、研修記録、訓練記録)
🔲秘密保持関係(就業規則、入所者等からの同意書)
🔲非常災害関係(消防設備の定期点検結果、防火管理者の選任届、消防計画、災害時対応マニュアル、洪水等の避難確保計画(該当する場合)、職員の緊急連絡網、訓練記録、自主点検記録)
🔲入退所関係(入所判定に係る書類等、フェイスシート、モニタリング・入所継続検討会議等の記録)
🔲施設サービス計画関係(計画、アセスメントシート、サービス担当者会議録等、入所者個人台帳等、サービス担当者会議録等)
🔲介護関係(施設サービス計画、サービス担当者会議録、支援経過記録等)
🔲機能訓練関係(個別機能訓練計画等)
🔲健康管理関係(施設サービス計画、支援経過記録等)
🔲重要事項説明書
🔲運営規程
🔲預り金関係(契約書(同意書)、出納台帳、管理責任者による例月点検の記録、身元引受人等への収支報告の記録、受領書)
🔲喀痰吸引関係(登録書、医師の指示書、資格証(研修修了書))
指針やマニュアル関係は、策定日や見直しの検討がされているのかを確認しておきましょう。
施設サービス計画書や身体拘束に関する同意書などは、同意日や期間に漏れがないか確認しておくことも重要です。
指導監査の当日の流れ
今回の指導監査では、県の担当者2名が来所(1名会計・1名事業対応)し、施設内のラウンド(巡回)は実施されず、到着されてすぐに監査が始まりました。
ちなみに予定では「13:30~16:30」の予定でしたが、県から当日連絡があり、13:00からのスタートになりました。
流れとしては「人員基準」➡「設備基準」➡「運営基準」➡「総評」の順で、事前に提出した資料の最初から順番に確認が行われました。
指導監査①:人員基準について
今回の指導監査で一番時間がかかったのが、「人員基準」でした。
勤務表と出勤簿を照らし合わせながら、職員の資格証を確認していました。ひとりひとり細かく確認したため、30分以上かかりました。
質問と回答
・長期休業している職員のところで「この職員は、流行り病(コロナ)とかで休んでるんですか?」
➡産休職員、病休職員がいることを伝える。
聞かれたのは、上記のひとつだけで、あとは県の担当者がひたすら確認するのみで終了しました。
指導監査②:設備基準について
「設備基準」については提出した平面図を見るのみで終了しました。ほんの5分程度で終了しました。
質問と回答
・前回(平成28年度)の監査から、設備を追加したり改築したり、使用の用途が変更になった箇所はありますか?
➡特に変更なく、浴槽の入れ替えのみであることを伝える。
施設のラウンド(巡回)はなかったので、現場を確認することなく口頭で回答したのみで終了しました。
指導監査③:運営基準について
項目としては、運営基準が一番多くなります。
しかし、今回の監査ではご利用者の施設サービス計画やモニタリングの中身などを見られることはありませんでした。
項目が多いので、確認されたを下記にまとめておきます。
運営基準の確認項目
○資質向上のための研修
・研修の起案、研修資料、研修報告を確認 ※内容について細かく問われず
・法定研修(身体拘束、虐待防止、感染症)年2回の実施を確認 ※内容について細かく問われず
・法定研修(身体拘束、虐待防止、感染症)年2回の実施を確認 ※内容について細かく問われず
・採用職員研修実施の確認 ※内容について細かく問われず
・外部研修の資料、復命書の確認 ※内容について細かく問われず
○認知症基礎研修の義務化について
・2024年4月から義務化、現在職員のほとんどが有資格者であり、対象者がいないと回答
○ハラスメントについて明文化されているものの確認
・運営規定の確認
・相談窓口の周知方法、掲示の有無について確認 ※現場確認されず
○BCP(業務継続計画)について
・作成中であることを伝える ※作成途中でも見せてほしいとの話があるが、施設長より「見せられるレベルでない。」と伝える
○身体拘束適正化について
・身体拘束適正化委員会の会議録の確認 ※内容について細かく問われず
・指針、マニュアル確認 ※内容について細かく問われず
・身体拘束を実施している方の実施記録、同意書、検討会議録 ※内容について細かく問われず
○事故防止について
・安全対策委員会の会議録、事故及びヒヤリハット報告書の確認 ※内容について細かく問われず
○苦情処理について
・指針、仕組みについて運営規定で確認 ※内容について細かく問われず
・苦情の有無について、口頭で「なし」と答える ※苦情受付票等は確認されず
○衛生管理について
・感染症対策委員会の会議録の確認、指針の確認 ※内容について細かく問われず
○秘密保持
・就業規則の確認 ※内容について細かく問われず
○防災関連
・防災計画、防火管理者、消防計画の確認 ※内容について細かく問われず
・訓練の実施の確認 ※内容について細かく問われず
○喀痰吸引について
・夜間、特定医療行為を行った利用者と対応した職員の記録と資格保持の確認 ※内容について細かく問われず
・ケースファイル、パソコン記録の確認 ※内容について細かく問われず
○協力歯科医の確認
・契約書の取り交わしはないが、必要時に協力いただいていると回答
基本的には、年2回の法定研修がきちんと行われているか、各種指針やマニュアルがきちんとあるかどうかなどを書面を通じて確認することがほとんどでした。
内容について質問されることもほとんどなく、こちらが話す場面は少なかったです。
指導監査④:総評
今回の指導監査では指摘事項なしという結果になりました。
まとめ
個人的には久しぶりの指導監査で、かなり緊張しましたが、結果的にはかなり緩く終了した印象です。
時間も3時間の予定が、1時間半というスピード決着でした。
良かった点
・指針やマニュアルの整理、見直しをすることができた
・研修内容の確認と評価ができた
・健全な経営のための意識づけができた
県の担当者にお聞きしたところ、午前中も指導監査を実施してきたが、早めに終了したと言っていました。
何はともあれ指摘事項なしで終わり、ひと安心でした。
これから「指導監査」を受ける予定の事業所の方や「指導監査」について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。