こんにちは、社会福祉士のほしくずです。
令和6年度の介護報酬改定から2か月が経過しました。
新しい加算の創設や処遇改善加算など、算定に向けた準備や申請書の提出などの業務を進めているところだと思います。
この記事では、新たに創設された『認知症ケアチーム推進加算』の対象施設や加算要件等についてまとめていきます。
加算算定をお考えの事業所は、ぜひ参考にしてみてください。
認知症ケアチーム推進加算とは?
認知症の行動・心理症状(以下BPSD」という。)の発現を未然に防ぐこと、あるいは出現時に早期に対応するための平時からの取組を推進する観点から創設された新しい加算です。
認知症ケアチーム推進加算Ⅰ(算定要件)
認知症チームケア推進加算(I)=150単位/月
(1)利用者の総数のうち、日常生活で周囲の注意を必要とする認知症の人、具体的には日常生活自立度II、III、IV、Mに該当する人などの占める割合が2分の1以上であること。
(2)認知症介護指導者養成研修を修了し、かつ、認知症チームケア推進研修を修了した人などを1名以上配置し、複数人の介護職員から成るBPSDに対応するチームを組んでいること。
(3)対象者に対し、個別にBPSDの評価を計画的に行い、その評価に基づく値を測定し、BPSDの予防などに資するチームケアを実施していること。
(4)BPSDの予防などに資する認知症ケアについて、カンファレンスの開催、計画の作成、BPSDの有無・程度の定期的な評価、ケアの振り返り、計画の見直しなどを行っていること。
認知症ケアチーム推進加算Ⅱ(算定要件)
認知症チームケア推進加算(II)=120単位/月
◯ 加算(I)の要件(1)(3)(4)を満たしていること。
◯ 認知症介護実践リーダー研修を修了し、かつ、認知症チームケア推進研修を修了した人などを1名以上配置し、複数人の介護職員から成るBPSDに対応するチームを組んでいること。
加算の対象事業所
認知症チームケア推進加算が算定できる事業所は、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)です。
認知症ケアチーム推進加算が目指すべき方向性
この加算を算定する事業所が目指すのは、認知症の症状があるご利用者の尊厳を守り、適切な介護を提供することです。適切な介護により、BPSD(行動・心理症状)の予防や早期対応が可能となり、重症化を防ぐことで、その方が安心して生活できるようなサービスを提供していきます。
その実現に向けて、チームによる認知症ケアを評価するために、この加算が創設されました。サービスを提供する事業所のチームは、配置要件を満たした介護職員等で構成され、日頃から入所者様に対して適切な介護を提供し、BPSDの予防と早期対応に努めていくことが求められます。
認知症ケアチームの役割とは?
この認知症に関わるケアチームの役割としては、以下の4つがあげられます。
ケアチームの役割
1,個々の入所者様に対して、BPSD評価指標を用いた定期的な評価を実施すること
2,評価結果に基づき、個別にケアプランを作成・実施すること
3,ケアプランは、入所者様の状態に合わせ、個別に作成し、画一的な内容にならないよう留意すること
4,入所者様の尊厳が十分に守られるよう、常に配慮すること
認知症チームは、対象者様一人ひとりに寄り添い、質の高いケアを提供するために、毎月1回以上の定期的なカンファレンスを開催します。
このカンファレンスでは、BPSD(行動・心理症状)を含む入所者様の状態を総合的に評価し、個別のケアプランを作成・見直しを行います。また、実際に実施したケアを振り返り、効果検証や改善点の洗い出しを行います。
また、ご利用者の尊厳を守るため、カンファレンスの内容やケア方針、実施内容等は、「認知症チームケア推進加算・ワークシート」及び介護記録等に詳細に記録します。
さらに、日々のケアの中で入所者様の心身の状態や環境に変化が生じた場合は、随時カンファレンスを開催し、迅速な再評価とケア方針の見直しを行います。
このように、認知症チームは定期的なカンファレンスを通して、入所者様の状態に合わせた最適なケアプランを作成・実行し、質の高い介護を提供することに努めています。
詳しくは厚生労働省の通知『認知症チームケア推進加算に関する実施上の留意事項等について』を確認してください。
認知症チームケア推進加算に係るQ&Aまとめ
令和6年度の介護報酬改定における厚生労働省のQ&Aについて確認しておきましょう。
「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(令和6年3月 19 日)」
「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(令和6年3月 19 日)」の内容。
問2|加算(I)の要件は、現行の認知症介護指導者養成研修修了のみでは満たさないという認識で良いか。また加算(II)の要件は、同様に認知症介護実践リーダー研修の修了のみでは満たさないという認識で良いか。
「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(令和6年3月 19 日)」
答え|認識の通り。本加算(I)では現行の認知症介護指導者養成研修の修了とともに、認知症チームケア推進研修を修了する必要がある。同様に加算(II)では、認知症介護実践リーダー研修の修了とともに、認知症チームケア推進研修を修了する必要がある。
問3|本加算は認知症のBPSDが認められる入所者のみ算定できるのか。
「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(令和6年3月 19 日)」
答え|本加算は、BPSDの予防などに資する取り組みを日頃から実施していることを評価する加算であるため、日常生活で周囲の注意を必要とする認知症の人に対し、BPSDの予防などに資するチームケアを実施していれば算定可能。
問4|本加算で配置要件となっている介護職は、複数の「BPSDに対応するチーム」に参加可能と考えてよいか。
「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(令和6年3月 19 日)」
答え|認識の通り。ただし、複数のチームに参加する場合であっても、各々のチームにおいて、求められる計画の作成、BPSDの評価、カンファレンスへの参加など、一定の関与が求められる。
問5|要件に「複数人の介護職員から成るBPSDに対応するチームを組んでいること」とあるが、介護職とはどのような人を指すのか。
「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(令和6年3月 19 日)」
答え|本加算の対象となるサービスを直接提供する職員を指す。職種については介護福祉士以外でも差し支えない。
問6|対象者に対して個別に行うBPSDの評価は、認知症チームケア推進研修において示された評価指標を用いなければならないのか。
「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(令和6年3月 19 日)」
答え|認識の通り。
問7|利用者のうち日常生活自立度II以上の割合が1/2以上であることが求められるが、届出日の属する月の前3月の各月末時点の入所者数の平均で算定するということで良いか。
「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(令和6年3月 19 日)」
答え|認識の通り。
問10|「別紙様式及び介護記録など」とは具体的に何を指すか。
答え|具体的には下記の通り。加算算定にあたって必ず作成が求められる。
◯ 別紙様式:認知症チームケア推進加算に係るワークシート。「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)(令和6年3月 19 日)」
◯ 介護記録等:介護日誌や施設サービス計画書、認知症対応型共同生活介護計画書などを示す。なお、介護記録については、入所者の状態の評価、ケア方針、実施したケアの振り返りなどを丁寧に記載することが重要であり、例示した介護記録以外のものを使用しても差し支えない。また、この加算のみのために新たな書式を定める必要はない。
「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.6)(令和6年5月 17 日)」
「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.6)(令和6年5月 17 日)」の内容。
問4|厚労省の令和3〜5年度老健事業で研修を修了した人は、認知症チームケア推進研修を修了したとみなしてよいか。
「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.6)(令和6年5月 17 日)」
答え|認識の通り。なお、令和5年度BPSDケア体制づくり研修修了者でない者については、令和6年度中に速やかに、認知症チームケア推進ケア研修で用いる研修動画を視聴することが望ましい。
問5|認知症介護実践リーダー研修の受講が予定されている人について、その受講前に認知症チームケア推進研修を受講することは可能か。
「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.6)(令和6年5月 17 日)」
答え|可能。配置要件になっている人が中心となった複数人の介護職員でチームを組むことが本加算の要件。チームケアのリーダーを養成するための認知症介護実践リーダー研修の受講対象となる者は、認知症チームケア推進研修の受講対象者になるものと考える。
まとめ
今回は『認知症チームケア推進加算』についてまとめてきました。
認知症の方は、これから益々増加していきます。日常的に認知症の方と関わる機会が多くなる中、BPSDへ適切に対処していくことは、ご利用者にとっても介護職員等にとっても有益です。
この加算をきっかけに、施設の認知症ケアを進めていくと良いのではないでしょうか?