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【2024年介護保険改正】社会保障審議会「意見書」から読み解く大転換を予感させるポイント2選

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ほしくず

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 さて、昨年末に社会保障審議会における「意見書」が公開され、介護保険鮮度の方向性について少しずつ見えてきました。

 介護事業所として気になる改正ポイントについても記載がありました。

 自己負担2割の拡大高所得者の1号保険料の引き上げ介護老人保健施設などの多床室料の自己負担化といった重要な論点については、結論が今年の夏まで先送りされました。

 軽度者(要介護1,2)の生活援助などを総合事業へ移管することやケアプランを自己負担化することなどは、結論が3年後まで持ち越されました。

 詳しくは「【重要】2024年度(令和6年度)介護保険制度改正・介護報酬改定見直しポイント5選」をご覧いただければと思います。

【重要】2024年度(令和6年度)介護保険制度改正・介護報酬改定見直しポイント5選

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 介護福祉施設で働いている身としては、ひとまず今年の夏まで状況を見守っていくことになりそうです。

 しかし、今回の「意見書」にある介護保険制度改正の背景には以下のような記載があります。

 「今後見込まれる人口構造の変化とそれに伴う社会環境の変化に対応し、高齢者の生活を支える介護保険制度であり続けるために、引き続き、制度の不断の見直しが必要」

 「2040 年頃を見通すと、高齢者人口に占める 85 歳以上人口の割合が上昇することが見込まれる。要介護認定率は年齢が上がるにつれ上昇し、特に 85歳以上で上昇する傾向にあることや一人当たり介護給付費が 85 歳以上の年齢階級で急増すること等を考え合わせれば、こうした人口動態が今後の介護保険制度にサービス需要や給付費の増加という形で大きなインパクトを与えることが見込まれる。また、85 歳以上人口の増加に伴い、認知機能が低下した高齢者も増加することが見込まれる」

社会保障審議会介護保険部会の「意見書」より

 全世代型社会保障の構築等を踏まえれば、もっと大きな改正が行われるのではないかと思い、再度「意見書」を読み込んでみると、介護福祉施設関係者だけでなく、一般の方にも影響がありそうな改正が行われる可能性があることが見えてきました。

 今回は、2024年介護保険制度が介護保険の大転換になる可能性がある「意見書」の記載について見ていきたいと思います。

2024年度(令和6年度)介護保険制度改正の背景

 改めて今回の介護保険制度改正の背景を確認しておきます。

介護保険制度改正の背景

・2025年に団塊の世代が75歳以上となる

・2040年には団塊ジュニア世代が65歳以上となり、高齢者人口がピークを迎える

・2040年に15歳から64歳までの生産年齢人口が急減していき、全産業において人材不足となる。そのため、サービスの需要に応じた介護人材の確保が難しくなる

・都市部では高齢者人口が急増する一方、高齢者人口がピークを迎えている地域では緩やかに減少してくるため、地域のニーズに応じた柔軟なサービス提供が必要となる

 2025年以降、日本の人口構造は大きく変化していきます。これに合わせて、政府は全世代型社会保障も踏まえて制度設計をしていくことが必要になります。

2024年度(令和6年度)介護保険制度が大転換する可能性

 社会保障審議会の「意見書」を読み返していく中で、特に気になった点を2つご紹介します。

気になるポイント

①将来的には被保険者の範囲を拡大して介護の普遍化を図るべき、現実に40歳未満の若年層でも介護をしている実態がある、などの意見もあった。


②高齢者の就業率の上昇や健康寿命の延伸、要介護認定率の状況なども踏まえ、第1号被保険者の対象年齢を引き上げる議論も必要、との意見もあった。

 もう少し詳しく解説します。

大転換を予感させるポイント①:第2号被保険者の引き下げ

 気になるポイント①「将来的には被保険者の範囲を拡大して介護の普遍化を図るべき、現実に40歳未満の若年層でも介護をしている実態がある、などの意見もあった。」について考察していきます。

 現在の介護保険制度は、第2号被保険者を「40歳以上65歳未満」と設定しています。もともとこの範囲を「30歳以上65歳未満」に変更する議論については継続的に行われてきました。

 今回、「第2号被保険者の引き下げ」に注目する理由は2つあります。

ポイント

理由1:膨らみ続ける介護給付費のために、介護保険料が年々増加している。この介護保険料を抑制していくため

理由2:少子化や晩婚化の影響により、65歳以上の親を持つ子が30歳台であることが増え、今後もその傾向が続くため

 「理由1」については当然であるが、「理由2」については65歳以上の介護を要する親を抱える世代が40歳台でなく30歳台であることが増えてきている現状があります。

 まずは、現行の制度の中で給付と負担を見直していく必要があるが、今後の議論しだいでは「第2号被保険者の引き下げ」も現実味を帯びてきそうです。

大転換を予感させるポイント②:第1号被保険者の対象年齢を引き上げ

 今回の意見書では、「第1号被保険者の対象年齢を引き上げる議論も必要」との意見が明記されています。

 健康寿命や平均寿命の延びはもちろんですが、制度や仕組みについて対象年齢の引き上げが起こっています。

ポイント

・日本老年学会は2017年に、「高齢者」の定義を65歳以上から75歳以上にすることを提言

・令和4年4月から、公的年金の繰り下げ受給について、受給開始年齢の上限が70歳から75歳へ引き上げられた

・2025年度から会社員などの定年が60歳から65歳になる

70歳までの就労機会の確保が努力目標

 これらを踏まえると「第1号被保険者の対象年齢を引き上げ」についても、近々議論が開始されると思われます。

2024年度の改正に関する議論はまだまだこれから

 通例であれば、介護保険制度改正は3年ごとに行われ、2年目の12月に骨子が決定しています。しかし、今回の介護保険制度改正は先送りや先延ばしのことが多く、まだまだ見通しがはっきりしてきません。

 現状ではこの「意見書」を確認しながら、事業所として組織としてどのように対応していくのか、改正内容を予測しながら動いていく必要があります。

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