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【介護報酬プラス改定なるか?】全国老施協が令和6年度介護報酬改定に向けた要望書を提出!重点事項5つを解説

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ほしくず

生活相談員(社会福祉士,介護福祉士,介護支援専門員,実習指導者) デイサービス、ショートステイ、特養の生活相談員を15年以上経験して感じた相談員の楽しさ、業務に役立つ情報、楽しく働くコツをわかりやすく解説。現役だから分かる仕事のテクニックや情報をお届けします。

 こんにちは、社会福祉士のほしくずです。

 今回は、令和6年度の介護報酬改定に向けて、全国老人福祉施設協議会が厚生労働省に対して行った要望についてまとめていきたいと思います。

 全国老施協は、今年度に会長選があり、はじめての女性リーダー大山知子会長が就任しました。

 まずは、新会長である大山氏は、目の前に迫る報酬改定について積極的な動きを見せており、今回も厚生労働省に対する要望書という形で、介護報酬プラス改定を含む様々な内容を訴えてくれました。

 今、介護業界は苦しい経営状況に陥っています。今回の介護報酬をプラス改定にしていくために、ひとりひとりができることは小さな事かもしれませんが、まずは介護業界で働く私たち自身が、関心を持っていくことが重要だと思います。

 今回の記事では、要望書の内容をまとめて解説していきますので、皆さんに少しでも興味を持って頂けたら嬉しいです。

介護報酬をプラス改定へ!要望の背景にあるもの

 介護業界は、慢性的な人手不足となっており、先々では2040年問題を控えています。

 今後、介護人材を確保していくことが難しくなれば、介護崩壊が起きてしまい、国民の生活にも影響を与えていくことになります。


 また、新型コロナウイルス感染症に対する対応の長期化や物価高騰の影響もあり、介護事業の経営が厳しさを増してきています。他の産業では、物価高に対応する賃上げ機運の高まり、介護人材が流出するなど、人材難に拍車がかかってきている状況です。

 経営収支においても人材確保においても、現在の状況が続けば事業の継続が難しくなり、介護事業の縮小・廃止をする事業所が増加することが危惧されています。

 こういった現況であるため、物価高騰や賃金上昇に見合う介護報酬のプラス改定が求められているというわけです。

介護事業は赤字施設が過去最多

 全国老人福祉施設協議会が毎年実施している特別養護老人ホーム等の決算値に関する調査では、昨年度は62%の特養が赤字(速報値)。

 前年度(43%)より19ポイント上がって過去最悪となった。新型コロナウイルスの感染拡大への対応や人材不足に伴う賃金改善、急激な物価高騰に伴うコストの増大が追い打ちをかけた状況です。

 介護事業は、収益のほとんどが介護報酬となっており、経営の悪化による影響を価格転嫁で対応することができません。

介護報酬改定に対する重点事項5つ

 全国老施協は、要望書の中で介護報酬改定に係る重点事項を以下のように掲げています。

ポイント

1、基本報酬の増額

2、介護従事者の処遇改善

3、食費・居住費に係る基準費用額の見直し

4、介護報酬改定の施行時期

 それぞれの重点事項について確認しておきましょう。

介護報酬改定重点事項①:基本報酬の増額

 全国老施協が毎年度実施している特別養護老人ホーム等の決算値に関する調査(以下、「収支状況等調査」という)の令和4年度速報値によると、回答を得た1,600の特養のうち、赤字施設の割合(補助金除く)は、令和3年度で43.0%であったものが令和4年度には62.0%と大きく増加し、過去最悪となりました。

 過去漸減傾向であった収支差率(補助金除く)は、△2.8%と初めてのマイナスとなりました。


 介護保険事業は、収益の殆どが公定価格である介護報酬であり、施設の経営努力だけでは事業継続していくことが困難になってきています。このままでは事業継続自体が困難となり介護事業を休止・廃止する事業者の増加が危惧され、事業撤退による地域の介護基盤が崩壊してしまう危険性が高くなります。

 介護保険制度の安定性・持続可能性を維持するためには、介護事業者の事業継続が可能となるように介護報酬プラス改定が必要な状況となってるわけです。

介護報酬改定重点事項②:介護従事者の処遇改善

 これまで介護事業所は、処遇改善加算に自助努力も併せて処遇改善に取り組んできました。

 事業所では、介護職員のみが働いているわけではなく、その他の職種も含めた中で不公平感が大きくならない形で、公定価格である以上改善を行ってきましたが、今後も継続していくには限界があります。

 介護事業の令和5年度の平均賃上げ率は1.42% となっており、他の産業のの賃上げ率3.58%大きく下回っていることが明らかになっています。

 これにより、介護職員の平均月額賃金と全産業平均との差額が令和4年に6.8万円であったものが、更に拡大する見込みになりました。

 このような中、介護現場からの離職者が増加しており、他業種への流出も多くみられるようになってきています。

 特に経験を有する中堅の人材の離職率は50%近く増加しており、知識やスキルを持った職員が減少することで、職員育成にも影響が出てきています。

 人材確保のベースとして、賃金改善のための施策をお願いしたいところです。

介護報酬改定重点事項③:食費・居住費に係る基準費用額の見直し

 基準費用額は、食費及び居住費に関する費用のことです。

 食費については、令和2年度介護事業経営実態調査結果を受けて令和3年8月に1,392円/日から1,445円/日に見直されました。

 居住費については消費税改正を受けて令和元年10月多床室840円/日から855円/日に、従来型個室1,150円/日から1,171円/日に、ユニット型個室は1,970円/日から2,006円/日に見直されていますが、当時と比べれば、その後も賃金・物価は上がり続けています。

 介護事業所で価格転嫁するのであれば、この食費や居住費になるのですが、私の勤務する事業所を例にあげると、負担限度額認定証を持っている方が半数以上を占めています。

 補足給付(自己負担に対して公費で賄われる料金)は、基準費用額までしか支払われないため、価格転嫁したところで全てのご利用者からその価格を請求できるわけではありません。

 令和 5年度においても引き続き賃金・物価上昇は続くものと予想されていますので、基準費用額を上げ、補足給付も含めた料金改定が必要になると思われます。

介護報酬改定重点事項④:介護報酬改定の施行時期

 社会保障審議会介護給付費分科会において、介護報酬改定の施行時期について、従来通り4月とすべきか診療報酬改定に合わせて6月とすべきかについて議論が行われました。


  しかし、今の制度上、6月に報酬改定をずらすメリットがありません。


 現況を踏まえると、一刻も早い報酬改定の施行をするべきだと思いますので、施行時期については4月のままで継続してもらいたいと思います。

全国老施協「介護報酬改定に係る要望書」まとめ

 来年度に迫った介護報酬改定ですが、賃上げや事業所経営、人手不足解消のためにはプラス改定が必須です。

 今回は、全国老施協の要望書の重点事項についてまとめてきました。

 この要望書では、事業形態ごとの内容も記載されていますので、次の機会に整理していきたいと思います。

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