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福祉・介護の勉強部屋

【もうイライラしない】怒りのコントロール~介護・福祉施設職員のためのアンガーマネジメント研修~

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ほしくず

生活相談員(社会福祉士,介護福祉士,介護支援専門員,実習指導者) デイサービス、ショートステイ、特養の生活相談員を15年以上経験して感じた相談員の楽しさ、業務に役立つ情報、楽しく働くコツをわかりやすく解説。現役だから分かる仕事のテクニックや情報をお届けします。

 介護など福祉の現場で働いていると、職員やご利用者に対してイライラしてしまうこと怒りの感情を抱くことがあるでしょう。怒りの感情のままに行動してしまうと、人間関係を悪化させたり、ご利用者に対しての対応が雑になったり、強い口調になったりしてしまいます。

 そして、怒りの感情のままにしてしまった言動のあとには、後悔しか残りません

 そうならないためにぜひ実践してほしいのが「アンガーマネジメント」です。

 アンガーマネジメントは、「上手に怒ること、怒る必要のないことに怒らないこと、怒りのストレスを軽減すること」です。

 怒りの感情に対して、適切に対応できるようになれば、良好な人間関係の構築やストレスの軽減、モチベーションのアップにつながります。また、アンガーマネジメントを学ぶことは、介護・福祉の現場だけでなく、日常生活にもメリットがあります。

 多様化する価値観の中で、アンガーマネジメントはあらゆる分野で注目されています。

アンガーマネジメントとは

 アンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで生まれたとされている怒りの感情と上手に付き合いコントロールするスキルを得るための心理トレーニングのことです。

 アンガーマネジメントの目的は、「怒らないこと」ではありません

 「上手に怒ること、怒る必要のないことに怒らないこと、怒りのストレスを軽減すること」で、自分をコントロールしていくことが目的です。

 現在では一般の企業研修や青少年教育、医療福祉、人間関係でのカウンセリングなど、多くの分野で活用されています。

介護・福祉職員がアンガーマネジメントを学ぶメリット

 介護や福祉の現場は、基本的に人を相手にする仕事であり、コミュニケーションが基本となる職種です。

 「イライラしていては、良いサービスを提供できない」と頭では分かっていても、介護現場ではイライラや怒りを感じる要因が多く存在しています。

介護現場で起こりやすいイライラ・怒りの要因

・人材不足でいつも業務が忙しく、休みがなかなかとれない
・認知症の方が同じ訴えを繰り返してくる
・自分のことしか考えていない職員がいる
・一方的に注意されたり、叱責されたとき など

 いくつもの要因が日々の業務の中で溜まっていってしまうと、怒りやイライラなどのマイナスの気持ちが爆発し、ご利用者への対応に悪影響を与えるだけでなく、職員同士の人間関係の悪化にもつながる可能性があります。

 だからこそ、介護や福祉施設職員は、アンガーマネジメントを学ぶ必要があると言えます。

アンガーマネジメントを学ぶメリット

怒りをコントロールすることでストレスが減る
・怒りの原因を整理して適切に対処できるようになる
・怒りを適切に相手に伝えることができるようになる
・モチベーションアップにつながる
・ご利用者や家族、職員とのコミュニケーションが円滑にとれる

 介護職は「イライラ」や「カッ」となる場面が多い職業です。
 だからこそ、介護職の一人ひとりがアンガーマネジメントを身につけ、自分自身が上手く怒りをコントロールしストレスを抱え込み過ぎないようにすることが大切です。

アンガー(怒り)の正体とは

 「怒り」とは、感情表現のひとつであり、人間にとって自然なものです。怒りを感じない人はいませんし、怒りの感情をなくすことはできません。

 「怒り」という一見厄介な感情にも、きちんと「防衛機能」という役割があります。

 怒りの感情は、脳内の「大脳辺縁系」というところで生まれ、怒りが発生すると、アドレナリンやノルアドレナリンが大量に分泌され、ブドウ糖や酸素を全身に送ろうと脈拍を速くして血流を増やし、爆発的な力を発揮します。

 「怒り」の感情が、「行動力」「突破力」「爆発力」となって、難しい課題を解決するための原動力になるのです。

怒り=悪という誤解

 「怒り」の感情の役割を理解すれば、「怒り」が必ずしも「悪」ではないことがわかると思います。

 しかし、適切な表現ができなければ、「怒り」は「悪」にもなり得ます。つまり「怒り」は悪いものであるかと言われれば、半分正解で半分ハズレということになります。

不適切な「怒り」による誤解

・怒りで人をコントロールしようとする誤解

・怒りは、感情のまま吐き出せばいいという誤解

・怒りは感情だから、制御できないという誤解

 例えば、子供が間違ったことをしてしまった場合、自分の怒りに任せて怒鳴りつけたとしても、子供が間違いを理解して正そうとする行動をとるでしょうか?子供に対して怒りの感情をぶつけ、恐怖でコントロールしようとしたり、子供の意見や想いを聞かず、感情のままに怒鳴っても、おそらく子供は恐怖を抱くだけでしょう。

 「怒り」をコントロールして、適切な表現をしないとその「怒り」は「悪」になるということです。

問題となる4つの「怒り」の感情

 介護サービスや人間関係に悪影響を与える正しくない「怒り」の感情がないか、まずは自分自身で振り返ってみましょう。

4つの怒り(問題となる)

強度が高い怒り...小さなことでも激昂する

持続性がある怒り...根に持つ、思い出して怒る

頻度が高い怒り...いつもイライラしている、すぐにカチンとくる

攻撃性がある怒り...他人を傷つける、自分を傷つける、物を破壊する

 これらは、どれも問題を引き起こす怒りです。自分の怒りの特徴を知っておくことが重要です。

アンガー(怒り)が生まれるメカニズム

 「怒り」は、「理想」と「現実」のギャップによって生まれます。

 「○○であるべき」という想いが強く、その想いと現実のギャップが大きいほど、コントロールできていない「怒り」は強くなります。

あらゆる「~とは○○であるべき」ということ

・家族とは ・会社とは ・上司とは ・男とは ・女とは ・介護職員とは

 いろいろな事に少なからず「○○であるくべき」という価値観が皆さんの中にあるはずです。

 同じ出来事に遭遇したとしても、その出来事に「怒り」が起こるかどうかは、「意味づけ」にかかっています。

 例えば、介護現場で同じミスが発生した場合でも、新人職員が起こした場合と、中堅職員が起こした場合、あるいはミスの大きさやその時の気分など意味づけの次元の違いによって、怒りの発生や度合いが違うということです。

アンガーマネジメント 怒りをコントロールする4つの方法

 実際にアンガーマネジメントを実践する方法を9つ説明します。怒りに対する衝動・思考・行動などに関するさまざまな方法がるので、興味のあるものから実践してみて自分に合ったコントロールの仕方を探してみましょう。

怒りをコントロールする方法1:6秒間ルールを実践する

 人間の怒りのピークは6秒程度と言われています。怒りを感じた瞬間に、その勢いで発してしまった言葉や態度は、もとに戻すことはできません。そこに残るのは後悔だけです。

 怒りの感情が沸き上がったら、6秒間ゆっくりと数を数えてみましょう。

 少しでも時間をあけることで気持ちが落ち着き、冷静に考えて行動することにつながります。

怒りをコントロールする方法2:一度その場を離れる

 少し間をおいても、どうしても我慢できない怒りは存在します。

 怒りが収まらず、冷静な対応が難しい時は、一旦その場を離れましょう。

 無言で離れると、相手にも怒りの感情が伝わったり、伝染してしまう可能性もあるため、「わかりました、ありがとうございます。」「他の人にも聞いてみます。ありがとうございます。」と言って離れましょう。

 「ありがとうございます。」を使うと、相手も嫌な気持ちになりにくいですし、自分も冷静になれるので、私はよく使います。

 離れたあとは、「トイレに行く」「歯磨きをする」など自分が冷静になれることを見つけ、時間を置きましょう

怒りをコントロールする方法3:自分のコーピングマントラを唱える

 コーピングマントラとは、自分を落ち着かせる言葉のことです。

 「怒り」の感情が沸き上がってきたら「冷静になろう」と心の中で唱えてみましょう。

 「落ち着け自分」でも「大丈夫」でも、自身に合ったコーピングマントラで構いません。ちなみに私は「なんてユニークな人なんだ」「バカだから仕方がない」と唱えます。言葉は悪いですが、相手には聞こえませんし、冷静になれれば問題ありません。

 皆さんも、自分のコーピングマントラを考えておくことをおススメします。

怒りをコントロールする方法4:怒りを分析する

 個人的に私が一番好き(おすすめ)な方法です。

 ノートでもメモでもなんでもいいので、怒りを感じた言葉や内容を書いて、時間がある時に分析してみます。

 「相手のどの言葉・態度に反応したのか」「自分の言葉や態度に問題はなかったか」をふり返ってみるのです。この分析を行うことで、次に同じような場面に遭遇した時の対処法を考えておくことができますし、そのような状況にならないための準備をすることができます。

自分の言動をふり返るきっかけにもなりますので、個人的には一番おススメの方法です。

怒りをコントロールする方法4:相手に期待することをやめる

 「~するべき」「~されるべき」など、「~すべき」という考えと現実の行動・言動とのギャップで怒りの感情が生まれるというメカニズムをお話しました。考え方や価値観には個人差があるため、同じ介護職員同士でも意見が割れることもあります

 自分の「~べき」という思考を知り、相手にも「~であるべき」があることを認められると、怒りの感情を抑えることができます。

 自分と相手は違います。相手に期待するのではなく、自分が変わることを意識した方が、自身の成長にもつながります

アンガーマネジメントまとめ

 「怒り」は、必ずしも悪い感情ではありません。「怒り」大きな力を発揮することもあります。

 「アンガーマネジメント」はマイナスな結果を引き起こす原因となる適切でない「怒り」を抑え、プラスの結果を生む「怒り」によって能動的に行動するスキルと言えるかもしれません。

 「アンガーマネジメント」は、意識的に行動していけば、だれでも身に付けることが出来る「スキル」です。今回ご紹介した方法はほんの一部ですが、参考にしていただければと思います。

もっとアンガーマネジメントを学びたい人へ

 アンガーマネジメントをもっと深く知りたい人は、本を読み漁ったり、専門スキルを身につける講座に挑戦する方法があります。

書籍で学ぶアンガーマネジメント

 アンガーマネジメントに関する書籍を読むことで、もっとアンガーマネジメントについて知ることができます。本であれば、介護の休憩中やすきま時間に読むこともできるので、手軽に知識を身につけられます。読んだ内容を実際にアンガーマネジメントを実践してみるとよいでしょう。

専門の講座を受講してみる

 アンガーマネジメントを学べるスクールや通信講座を利用するのもおすすめです。講座にはアンガーマネジメントの基礎を学ぶもの、応用を学ぶもの、人に教えるための資格を目指すものなど、さまざまなものがあります。

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