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【高齢者虐待⁉】エアコン故障でロビー(廊下)生活...特別養護老人ホームつつじ荘の対応は何がマズかったのか?

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ほしくず

生活相談員(社会福祉士,介護福祉士,介護支援専門員,実習指導者) デイサービス、ショートステイ、特養の生活相談員を15年以上経験して感じた相談員の楽しさ、業務に役立つ情報、楽しく働くコツをわかりやすく解説。現役だから分かる仕事のテクニックや情報をお届けします。

 こんにちは、社会福祉士のほしくずです。

 今回は、74歳から101歳の高齢者4人を3週間ロビーで生活させたとして、高齢者虐待防止法に基づく調査が行われている「特別養護老人ホームつつじ荘」の件について考察していきたいと思います。

 今回、この件を取り上げたのは、ニュースの報道の仕方やコメンテーターのコメントに違和感を感じたからです。

 この問題の捉え方を間違えてしまうと、高齢者介護を取り巻く環境や世間の目がさらに厳しくなってしまうのではないかと懸念しているからです。

 高齢者虐待については、以下のように「令和3年度 高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査結果」で過去最多となりました。

養介護施設従事者等によるもの養護者によるもの
虐待判断件数相談・通報件数虐待判断件数相談・通報件数
令和3年度7392,39016,426件36,378件
令和2年度595件2,097件17,281件35,774件
令和3年度 高齢者虐待防止法に基づく対応状況等に関する調査結果より

特別養護老人ホームつづじ荘の虐待が疑われた行為(愛知県豊橋市)

 虐待が疑われている施設は、愛知県豊橋市が運営する「特別養護老人ホームつつじ荘」です。

 市によると、市が運営するホーム「つつじ荘」で2023年8月、エアコンが故障した3つの部屋から、70代から100歳代までの利用者4人のベッドを冷房が効く廊下に移動させていた。 4人は、エアコンの修理が終わるまでの3週間、廊下で生活させられたほか、関係者から、利用者同士の間にプライバシー保護の仕切りを置かず、おむつ交換などをしていたという通報もあったという。 このホームでは、2022年7月にも、同じ理由で一部の利用者を廊下で生活させていたということで、市は虐待にあたる可能性もあるとみて、職員への聞き取りを進めている。

「イット!」10月2日放送より

 この報道の中では、「ロビー(廊下)で生活させていたこと」「プライバシーの保護が行われていなかったこと」の2点が問題点としてあげられています。これに加えて、入所者のご家族などに対して対応を連絡していなかったことも問題点としてあげられます。

報道番組の司会者やコメンテーターの反応

 「ロビー(廊下)で生活させるなんて...」

 「高齢者にも人権がありますから、廊下で生活させるなんて...もう少し人権、権利擁護について考えてもらいたいです」

 ざっくりいうと上記のようなニュアンスで批判するコメントがありました。

 しかし、この施設の対応の中では、「エアコンが故障した部屋で生活をされていたご利用者をエアコンが効く廊下に移動して生活させていた」となっています。

 言葉の上げ足をとるわけではありませんが、「じゃあエアコンの効かない8月の暑い部屋の中で、我慢して生活してもらうこと」人権を守る対応と言えるのでしょうか?

 少なくとも、公の場でコメントをするのであれば、もう少し施設側の考えも汲み取った総合的なコメントにしてほしかったと思います。

 虐待は確かにしてはいけません。しかし、今回の対応の場合はやり方に不備はあったにせよ、エアコンが故障した中で、なんとかご利用者に快適に、安全に過ごしてもらおうとした対応だったのではないかと思います。

 皆さんが施設の職員だったらどうしますか?

 「エアコン効かないけど、他の部屋も空いてないから、暑いけど部屋で我慢してもらうしかないよね」って言えますか?

 闇雲に施設側を批判だけするのは、高齢者施設で働く者にとっては非常に恐ろしいことです。

今回の対応で問題となること

 とはいえ、施設側に落ち度がないわけではありません。次の2点については対応がマズかったと思います。

マズい対応2点

1、入所者のプライバシーに配慮した対応ができていなかったこと

2,入所者の家族に、その対応を連絡していなかったこと

 もう少し詳しく見ていきましょう。

マズかった対応①:入所者のプライバシーに配慮した対応ができていなかったこと

 日常的にパーティションなどを使用していなかっただけでなく、オムツ交換など肌を露出する場面でもパーティションを使用していなかったのは、「入所者のプライバシーに配慮した対応ができていなかったこと」として問題です。

 これは、心理的虐待及び性的虐待にあたる可能性があります。

 お部屋の中やお風呂場であっても、カーテンを使用したり、肌が露出しないようにタオルをかけたりするのは、当たり前の対応です。

 それを行わず、違和感なくやってしまったのであれば、職員の教育不足は明らかです。

マズかった対応②:入所者の家族に、その対応を連絡していなかったこと

 廊下で生活をするというのは、日常y的な対応からすれば非常にイレギュラーな対応になります。

 普段と違うことをすると、事故などが起こりやすくなります。

 普段していない対応やご家族が認識しているであろう対応と異なる対応をするのであれば、必ずご家族などにその対応をお伝えし、理解を頂くことが原則です。

 私は「生活相談員」という立場でもあるので、そのような対応を一時的にでも行うのであれば、必ずご家族などに連絡します。

 これを怠ったのは、非常に大きな問題ですし、普段からのリスクマネジメント意識を疑ってしまいます。

特別養護老人ホームつつじ荘では、研修が不足⁉

 介護サービス情報の公表システムで「特別養護老人ホームつつじ荘のレーダーチャート」を見てみると、従業員の研修等が5段階中1と非常に低くなっています。

 もしかしたら、日頃からの研修や虐待に関する知識・認識の低さはあった可能性が高いです。

まとめ

 今回は、特別養護老人ホームつつじ荘で起きた虐待が疑われている行為について考察してみました。

 ネットやSNSなどで簡単に情報が手に入る時代、福祉施設だけでなく病院や学校なども、報道の一部を切り取られ、批判の対象とされることが多くなったように思います。

 現場を知らない人たちは、その一部を見て格好のネタにし、批判し、勝手に悪いイメージだけを植え付けていきます。

 今回の報道の仕方「廊下で生活させる行為」だけを切り取って批判するのは、問題の根幹が見えていない稚拙な報道やコメントだったと思います。

 確かに虐待行為については、明確に否定します。しかし、日々頑張っている介護職員のほうが圧倒的に多いです。

 日々の介護業務は大変かもしれませんが、一緒に頑張っていきましょう。

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