不規則勤務で忙しい、時間がない介護職員や生活相談員のために、知識や思考法、ノウハウが詰まった本の内容を解説していきます。
今回、解説していく本はこちら↓
あなたが生活の中で感じている生きづらさは、もしかしたら発達障害グレーゾーンが原因かもしれません。
もし発達障害グレーゾーンだった場合、この本の内容を理解することで、少し前向きになれるきっかけを掴めるかもしれませんので、ぜひ最後まで読んでみてください。
『発達障害「グレーゾーン」 その正しい理解と克服法』の概要
「もしかして自分も発達障害のグレーゾンかも」って思わされる、とても興味深い本でした。
自分自身、もしくは周囲にこんな方はいませんか?
・空気が読めない人
・人の気持ちに共感できない人
・勉強が苦手な人
・忘れ物が多い人
・敏感で傷つきやすい
ひとつくらい当てはまるものがあるかもしれません。
私も気づかないうちに人を傷つける言動をしてしまったことがありますし、何かに集中しすぎて他人を寄せ付けない雰囲気を出していることがありました。
言われるまで全然そんなつもりはなかったのですが、それを言われてから自分の言動に気をつけるようにしています。
病院で検査しても発達障害までいかないけど、平均値よりは下というグレーゾーンの人は、実は多かったりするんですよね。
ポイント
1,発達障害グレーゾーンとは何か
2,愛着や心の傷を抱えているケースが多い
3,発達障害グレーゾーンは「特性」の理解が重要
この本では、そんなグレーゾーンで心が傷ついたり、生きづらさを感じている人のためになる1冊です。
発達障害とは
そもそも発達障害とは何か?
大きく分けると以下のようになります。
発達障害の診断基準は、アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)やWHOの診断基準である『ICD-10/11』(『国際疾病分類』第10版、第11版)といった国際的な診断基準を用いている場合が多くあります。
現れる症状について医師が問診や行動観察をおこない、必要に応じて心理検査や発達検査などをおこないます。
それらの結果が『DSM-5』や『ICD-10』などの診断基準を満たしているかどうか、また日常生活・社会生活に著しい不適応を起こしているかどうかなどを総合的に見て診断されます。
ADHD(注意欠陥多動性障害)とは
注意欠陥・多動症(ADHD)は、年齢にそぐわない不注意や多動性、衝動性などの症状が見られます。
・「不注意」...気が散りやすく目の前の作業に集中できない、物を紛失しやすいなど
・「多動性」...無意識のうちに身体が動く、常に動いていないと落ち着かないなど
・「衝動性」...思いついた行動をすぐにとってしまうなど
ひとつの症状が強く出ることもあれば、複数の症状が混在している場合もあります。
ASD(自閉症スペクトラム)
自閉スペクトラム症(ASD)は、自閉症やアスペルガー症候群と呼ばれることもあります。
・会話が上手く成り立たない
・言葉の遅れ
・興味・関心の偏り など
言葉やコミュニケーションの面で障害が出るケースが多く、集団行動をすることが苦手であり、他人とうまく関わることができない場合があります。
LD(学習障害)
学習障害(LD)では「読み書きや計算など特定の分野が苦手」などの症状が出現します。
・読字障害...「読むこと」が困難
・書字表出障害...「書くこと」が困難
・算数障害...「算数や推論」が困難
必ずしもすべての分野が苦手というわけではなく、一部が困難であるケースが多いです。
発達障害グレーゾーンとは
多くのケースがありますが、全て掲載できないので、あるケースで見ていきましょう。
普段の生活の中でこんな事はありませんか?
・うっかりミスが多い
・傘や眼鏡を忘れてしまうことがよくある
・集中すると他のことが目に入らなくなる
・遅刻をしてしまう
これらは、先に紹介したADHDの症状と同じ症状であると言えます。
また、親しくしていた異性に対しても、
・これ以上、自分のことを知られたくない
・自分をさらけ出すことが怖いと感じてしまう
こういう状況であっても、普通に会社に勤めていて発達障害とまでは言えない人たち、こういう人たちが「発達障害グレーゾーン」にあたります。
このケースの場合「愛着スタイル診断テスト」によると、「恐れ回避型愛着スタイル」であることが分かりました。
恐れ回避型愛着スタイルとは
このタイプは、心を開いた親密な関係を避けてしまうタイプです。
これは、子供のころの家庭環境が影響しており、それがADHA(注意欠陥多動性障害)に似た症状を引き起こす原因となっていました。
発達性トラウマ障害とも言われ、虐待など受けながら育った人に見られやすい症状でもあります。
このケースでは、父親から虐待を受けていた過去があり、それが原因で常に緊張状態を強いられたこと、父親から解放されたあとも、経済的な不安定から自分が仕事をすることで認められたいと仕事に集中し、その結果睡眠不足となり、不注意によるミスが増えていきました。
この場合、病院に行っても発達障害と診断されることはありませんが、発達障害に近い症状が見られることから、グレーゾーンということになります。
ポイント
○愛着心や心の傷が絡んでいることが少なくない
○特別な治療アプローチやサポート、幅広い知識や様々なケースに対応できる実践的な経験、ノウハウが必要である
グレーゾーンは様子見でいいのか?
発達障害の診断がなければ、受診をしたとしても「様子をみましょう」で終わってしまいます。
でも、その人の生きづらさは変わりません。
「グレーゾーン=何もしなくていい」ではありません。
何の働きかけもせずに、自然の成り行きに任せていると弱い部分はさらに弱くなり、急に深刻な問題として表面化するということになりやすい状況に陥っていきます。
ポイント
○グレーゾーンは決して様子を見ればいい状態ではなく細やかな注意と適切なサポートが必要な状態である
先ほどのケースのように、これまでの人生であった出来事等の情報収集が必要になります。
また「グレーゾーン」と言っても、様々なケースやバリエーションがあり、状態や生きづらさも変わってくるため、その状態に合わせた対応が必要になります。
グレーゾーンで大切なのは「特性」の理解
介護職員や生活相談員なら。日頃から意識できていることだと思いますが、障害があることや認知症があることだけでその方を理解した気になってはいけません。
この障害があるから、認知症だからと同じ対応をしていても、必ずその生きづらさや困難さを改善できるわけではありません。
その人の強みや生きづらさをきちんと理解し、適切なサポートや関わりにつなげていくことが重要なんだと思います。
まとめ
簡単にまとめます。
1,発達障害グレーゾーンとは何かを理解する
2,愛着や心の傷を抱えているケースが多く、そのために生きづらさを感じていることを知る
3,発達障害グレーゾーンは「特性」の理解が重要で、ひとりひとりに合わせた支援を考えていく
福祉に従事する者としては、障害ではなく「その人を理解する」ということの重要性を改めて考えさせられました。決めつけではなく、真摯に寄り添うケアを提供していきたいものです。
本は、人生を豊かにしてくれます。皆さんも興味がある本があれば、積極的に手にとって読んでみましょう。
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