前回(令和3年度)の介護報酬改定で策定することが定められた介護施設の業務継続計画(BCP)ですが、3年の経過措置を経て令和6年(2024年)に義務化されます。
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【令和6年度義務化】介護保険制度改正で実施が義務付けられる内容6選まとめ:令和3年度改正では経過措置だった取り組み
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残り1年半もあると思っていると、作成が遅れて間に合わなくなってしまいます。
こんな方におすすめの記事
・業務継続計画(BCP)の作り方がわからない
・どんな内容を組み込めば良いのかわからない
・そもそも業務継続計画(BCP)を策定する意義って何?
業務継続計画(BCP)の作成には、思ったより時間がかかります。そして、その時の状況に合わせて変更していくことも必要です。まだ時間があると高を括ることなく、早めの準備を進めてきましょう。
業務継続計画(BCP)とは何か
業務継続計画(BCP)とは、感染症や自然災害が発生しても、サービスを停止することなく継続していくための施策をまとめたものになります。
近年の新型コロナウイルス感染症の拡大により、クラスターが発生する施設が多くありました。感染拡大の防止と職員の安全を守るため、施設が事業を停止する事業所がありました。
その結果、サービスを必要とする高齢者の方がサービスを利用することができず、身体機能が低下したり認知症が進行したり、入浴できない日が続き、清潔を保てなかったりしました。家族も介護のために、仕事を休まざるを得ない状況も発生しました。
私たち介護事業所は、社会機能を停止させないために必要な事業となっています。そのために、簡単にはサービスを停止することができません。
業務継続計画(BCP)は、いざという時に慌てないように、あらかじめ有事の際の手段を考えて、すぐに行動できるように定めておくものになります。
業務継続計画(BCP)策定の意義
言うまでもなく万が一の備えのためです。
感染症にしろ、自然災害にしろ、介護施設に与える影響はとても大きいものになります。事前の準備が重要となります。どれほどの影響があるのかを少しまとめてみます。
介護施設への影響
○感染症:新型コロナウイルスの他、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症は集団感染のリスクがあり、感染すれば命の危険もある。高齢者施設は、密を避けられない状況であったり、個別に隔離することが難しく、収束するまでの期間が長くなる。
○自然災害:近年、ゲリラ豪雨や台風被害も大きくなってきている。高齢者施設では、避難行動が困難であり、施設のライフラインも完全ではないため、生きていくことが困難になる。職員も被災者となる可能性もある。
こういう状況に平時から備えておくこと、それが業務継続計画(BCP)策定の意義です。同時に、業務継続計画(BCP)策定の難しさもこういったところにあります。
業務継続計画(BCP)は、具体的な行動指針
感染症、災害が発生してもサービスを継続的に実施するため、早期に復旧するために計画するもので、他のサービス事業者との連携も可能、全従業員が関わることが望ましいとされています。
業務継続計画(BCP)は、自然災害や感染症が発生した場合の具板的な行動を示すものであって、全職員がその内容を把握し、有事の際には誰であっても行動できるようにしておかなければなりません。
そのため、BCP策定・研修・訓練は、すべての従事者が参加することが重要となります。内容としては以下のものが含まれます。
業務継続計画(BCP)の中身
・平時からの感染対策と備え
・感染症発生時の初動対応
・感染拡大防止に関する対応
そして具体的内容を従事者間で共有するために、研修や訓練などの実施が定められています。
ポイント
・研修:定期的な開催(新規採用時及び年2回)全職員対象
・訓練:感染症が発生した場合の初動対応と感染拡大防止策
・感染対策委員会:指針、研修、訓練(感染症)※追加 研修・訓練と一体的に実施
介護事業者は感染・災害でも事業を継続しなければなりません。BCP策定・研修・訓練を実施し、事業を「継続・早期の復旧・行動方針・手順や体制、行動指針も含めた計画」をしていきましょう。
業務継続計画(BCP)の策定方法
では、どのように業務継続計画(BCP)を策定すれば良いのかということになってきます。
手順としては以下のとおりです。
業務継続計画(BCP)策定の手順
1,事業内容にあったひな形を活用
2,関係部門と連携して策定
3,重要ポイントの確認
4,全職員への周知
詳しくみていきましょう。
策定手順1:事業内容にあったひな形を活用
業務継続計画(BCP)策定のためのひな形は、厚生労働省のホームページなどいろいろなところで公開されています。
まずは、自分たちの事業内容にあったものを選び、その通りに入力していくと効率的に策定できます。最初から考えようとすると、混乱してしまいますし、時間もかかりすぎるので、ひな形を使用することをおすすめします。
まずは、これを完成させることを目指しましょう。
策定手順2:関係部門と連携して記入
経営者、施設長、リスクマネジャー、看護職員、事務職員、介護職員、生活相談員など、各職種や立場で話し合いながら調整していきます。限られた職種や立場だけで作成すると、のちの細かな調整作業が多くなってしまいます。
災害対策本部の設置基準策定、経営者を巻き込んで関係部門が連携する(何を優先するのか、意識と知識を共有する)ことを意識して進めていきましょう。
ここに時間が一番かかります。
策定手順3:重要ポイントの確認
以下の重要ポイントのついて整理していきましょう。
ポイント
・役割分担:誰がいつ何をするのかを明確にする(見える化)。定着するまで粘り強く周知する。時間軸と役割分担で整理した内容にする
・通信手段:通信手段と強度が重要。手段・役割で用途と対象者と明確化する
・ライフライン:疑問⇒対応 自分が直面したらどう対応する?電気が止まった場合の対策、自家発電だけで大丈夫か?何が使えるのか?何時間分使えるのか?⇒見える化する、誰でも分かるようにする。ライフラインが止まった場合の対策は明確化されているか確認する
策定手順4:全職員への周知
ある程度策定できたら、全職員へ認知してもらう取り組みを行いましょう。BCP・マニュアル・リスト・マップなどは、ひとつのファイルにまとめ、いつでも職員の目が届きやすい場所に置くなどの工夫が必要です。
また、ICTを活用してどこからでもアクセスできるようにしておくことも有効です。紙ファイルだけでなく、社内イントラの活用していつでも確認できる環境整備も検討しておきましょう。
研修では、BCPの具体的内容を職員に共有する 関心を持ってもらう、開いてもらう工夫をしましょう。例えば、クイズ方式のシートを使って、業務継続計画(BCP)の内容を確認すれば解答できるテストを行うなど、とにかく目に触れる機会を増やすことが重要です。
まとめ
介護サービスを継続できるよう、現場が臨機応変に対応できるようにするために業務継続計画(BCP)を策定します。
有事の際も、職員が困らないよう判断基準や手順を示しておくことが重要で、誰であっても対応できるようにしておくこと。つまり現場対応力の向上が目的です。
運営基準上必要なものでありますが、決してそれが目的ではなく、自然災害や感染症が発生した場合でも、ご利用者そして職員が落ち着いて行動できるためのものであることを意識して策定しましょう。