自宅で家族の介護を続けておられる方の中には、いずれ施設へ入所させたいと考えている人も多いはず。
その中でも特別養護老人ホームは、社会福祉法人や市町村などの公益法人、公的機関が運営する介護福祉施設であり、公共性の高い事業所です。
そのため、民間が運営する有料老人ホームやサービス付高齢者向け住宅に比べて費用が安く、人気がある施設です。
この記事では、特別養護老人ホームに入居するまでの手順(流れ)について解説していきます。
・特別養護老人ホームに入居させたいけど、どうすれば良いのかわからない
・入居できる条件はあるの?
・入居が決まるまでの裏側を知りたい
このような悩みのある方に役立つ記事です。
特別養護老人ホームとは
特別養護老人ホームは、介護保険制度上では「介護老人福祉施設」と呼ばれており、社会福祉法人や公益法人などが運営する施設です。
・民間が運営する施設に比べて費用が安い
・終の棲家として、最期まで面倒をみてくれる
特別養護老人ホームへの入居には、このようなメリットがあります。医療機関ではないため、医師や看護師が24時間在中しているわけではありませんが、必要に応じて連絡を取り合ったり、看取り介護も提供している施設が多くあります。
入所基準
特別養護老人ホームに申し込みを行う場合には、入所基準を満たしている必要があります。
入所基準
①原則として年齢65歳以上で、介護保険の要介護認定で「要介護3」以上の認定を受けた方
②年齢40~64歳で要介護3以上の認定を受けた特定疾病のある方
③要介護1,2の方で、特例入所の対象となった方
この基準のいずれかに当てはまる方が入所の対象となります。
原則は①の基準を満たす方になります。
特定疾病とは
②の特定疾病とは、公的保険・民間保険において、特殊な扱いを受ける病気のことです。厚生労働省は、特定疾病を以下のように定義しています。
- 心身の病的加齢現象と医学的な関係があると考えられる疾病
- 加齢とともに生じる心身の変化が原因で、要介護状態を引き起こすような心身の障害をもたらすと認められる疾病
特定疾病と認定されるもの
1,がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
2,関節リウマチ
3,筋萎縮性側索硬化症
4,後縦靱帯骨化症
5,骨折を伴う骨粗鬆症
6,初老期における認知症
7,進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
8,脊髄小脳変性症
9,脊柱管狭窄症
10,早老症
11,多系統萎縮症
12,糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
13,脳血管疾患
14,閉塞性動脈硬化症
15,慢性閉塞性肺疾患
16,両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
要介護1,2の特例入所条件とは
特例入所とは、要介護1または2であっても、入所の対象となると判断された場合に入所できるものです。
特例入所の要件
○認知症であることにより、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、在宅生活が困難な状態であるか否か。
○ 知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られ、在宅生活が困難な状態であるか否か。
○ 家族等による深刻な虐待が疑われる等により、心身の安全・安心の確保が困難な状態であるか否か。
○ 単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により、家族等による支援が期待できず、かつ、地域での介護サービスや生活支援の供給が十分に認められないことにより、在宅生活が困難な状態であるか否か。
受け入れる側の施設が入所の判断をしますが、公平性を確保するために市町村の関与が必要となります。
施設が入居可能な判断をしても、市町村が特例入所の対象と認めなければ、入居することはできません。
手順①:要介護認定を受ける
特別養護老人ホームの入所基準にあるように、入所の申し込みをするためには要介護認定で要介護3以上の認定を受ける必要があります。もし、まだ要介護認定を受けていないようであれば、認定を受ける必要があります。
要介護認定を受けるには、市区町村にある地域包括支援センター、または役所の高齢者福祉窓口に以下の書類を揃えて申請を行います。
要介護認定申請に必要なもの
・要介護認定の申請書
・すでに介護認定を受けている方は介護保険の被保険者証
・マイナンバー通知書またはマイナンバーカード
・健康保険の保険証
本人で申請できなくても、家族が代行して行うことができます。それも難しい場合は、次のところで申請を代行をしてくれます。
代行申請をしてくれる機関
・地域包括支援センター
・病院の相談窓口(医療ソーシャルワーカーなど)
介護認定調査を受ける
要介護認定の申請をし、受理されると次は介護認定調査になります。
介護認定調査は次の4つの過程に分かれています。
介護認定調査の4つのステップ
1,訪問調査...ご自宅にケアマネジャーなどの認定調査員が訪問し、お身体の状態などを確認します。
2,主治医意見書...既往歴や治療中の病気などについての意見書を主治医から提出していただきます。
3,一次判定...コンピューターによる判定が行われます。
4,二次判定...医師や社会福祉士などの専門職と行政職員により、一次判定の結果について精査します。
以上の4つのステップを経て認定がおりれば、介護保険の被保険者証が発行されます。
手順②:入所したい施設を探す
要介護3以上の認定が出たら、入所を希望する特別養護老人ホームを探します。
早く入所したいのであれば、手当たり次第に申し込みを行うというやり方で良いと思いますが、自分の納得のいく施設を探したいということであれば、次の方法がおすすめです。
特養を探す方法
・担当のケアマネジャーや病院の看護師、介護サービス事業所の職員に聞く
・施設検索サイトで探す
担当のケアマネジャーや病院の看護師、介護サービス事業所の職員に聞く
担当ケアマネや普段通っている病院の看護師、地域の介護サービス事業所の職員に話を聞いてみると、施設の内情や職員の対応、施設の雰囲気などを教えてくれます。
口コミだけでは分からないレアな情報を教えてくれる場合もあるので、「少しでも良い施設を」とお考えの方は、ぜひ聞いてみると良いでしょう。
施設検索サイトで探す
施設といっても多くの事業所があり、なかなか探すのが大変だと思う方は、施設検索サイトを利用する方法がおすすめです。
施設検索は月間利用者数300万人以上の老人ホーム検索サイトNo.1【LIFULL介護】がおすすめです!都道府県・市町村ごとの検索はもちろん、見学対応可能な施設なども知ることができます。気になる施設があれば、資料請求も可能となっています。また、事業所種別を「特別養護老人ホーム」で指定すれば、間違うことなく調べることもできます。
納得のいく施設を選びたい方は、施設検索サイトを利用することをおすすめします。
手順③:入所したい施設が決まったら申し込みを行う
施設が決まったら、入所の申し込みを行いましょう。入所申し込みは、施設ごとに提出する必要があります。
施設の入所申し込みに必要な書類等を用意して、申し込みを行いましょう。
入所申し込みに必要なもの
・入所申し込み書...施設に取りに行くか、郵送で送ってもらうことで手に入れることができます。施設によってはホームページからダウンロードすることもできます。
・介護支援専門員意見書...入所申し込み書とセットになっています。こちらは担当のケアマネに書いてもらう書類です。
・介護保険の被保険者証...介護度の確認のため、申し込み時に提示を求められる場合があります。
・介護保険負担限度額認定証...非課税世帯で減免の対象となっている方は、利用料金が減額されますので、持っている方は持参すると、適用された場合の料金を知ることができます。
施設に入所したい(させたい)と思っていても、申し込みをしなければ声はかかりません。
また、急遽家で介護することが難しくなってから慌てて申し込んでも、すぐに入所できるわけではありませんし、焦る気持ちから高額な有料老人ホームやサービス付高齢者向け住宅へ入れてしまったなどという声も聞かれます。
思い立ったら行動しましょう。
手順④:入所が決まるまで待つ
申し込みが完了したら、施設から声がかかるまで待ちましょう。
人気の施設の場合は、年単位で待機することもありますので、こればかりは気長に待つしかありません。しかし、待機している間にもできることはあります。
待機中にできること
・要介護度が変わったら施設に連絡
・介護者の状況が変わったら施設に連絡
この2つは、入所順位に関係する項目です。
要介護度が高ければ、入所順位の得点が高くなりますし、介護者が病気になったり就労したりした場合も入所順位の得点が高くなりますので、早く入所したいのであれば、連絡をするようにしましょう。
手順⑤入所が決定したら契約して入所
入所が決まると、施設から連絡が来ます。
契約書や重要事項の説明書の説明や料金について納得したら契約しましょう。万が一、納得できない場合は契約しないということも可能ですが、いったん断ってしまうとその施設から声がかかることはほぼなくなるので注意しましょう。
まとめ
今回は特別養護老人ホームに入所するまでの流れを解説してきました。
特別養護老人ホーム入所までの流れ
1,要介護認定の申請
2,介護認定調査
3,入所を希望したい施設を探す
4,申し込みを行う
5,契約する
介護に関することは、実際の当事者にならなければなかなか知ることはできません。例えば、入所施設と言っても、様々な形態があり、なかなか分かりにくいのも事実です。
ご家族が元気なうちに、希望する施設を考えてみてはいかがでしょうか?