令和4年12月に行われた厚生労働省「社会保障審議会介護保険部会」において、令和6年度の介護報酬に向けた審議が行われ、介護保険制度の見直しに関する意見がまとめられました。
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【重要】2024年度(令和6年度)介護保険制度改正・介護報酬改定見直しポイント5選
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その中で、ひと際気になった情報が、実現すれば12年ぶりとなる「通所+訪問の新サービスの創設」です。
例えば、通所介護の事業所が利用者に訪問サービスを提供したり、通所介護と訪問介護の事業所が相互に連携したりして、より柔軟なサービス提供を行えるようにしていくという構想です。
この新サービスについては、市町村を指定権者とする「地域密着型サービス」として位置づける方向で調整していく。詳細については、今後議論していく予定です。
この記事の内容
・新サービス(通所+訪問)ってどんなサービスになるのか知りたい
・新サービスに期待すること
・新サービスについて気になる疑問点
これから議論は進められていくため、不透明な部分が多いですが、ご利用者にもサービス事業所にも分かりやすい制度設計にしてもらいたいですね。
今回は、現在分かっている情報を整理して、新サービスに対する期待と疑問点をまとめていきたいと思います。
「通所+訪問」新サービス創設の背景と目的
令和4年12月に行われた厚生労働省「社会保障審議会介護保険部会」において、令和6年度の介護報酬に向けた審議が行われ、介護保険制度の見直しに関する意見の中でも言及されていますが、これから高齢者人口が急増していき、生産年齢人口は減少していきます。
また、都市部では高齢者が急増する一方で、地方など高齢者人口がピークを迎えた地域では、緩やかにその数が減少していきます。
ポイント
今ある社会資源を有効活用しながら、柔軟なサービス提供体制を構築すること
世帯状況の人口構造の変化により、独居世帯や高齢者世帯の増加、都市部では介護を必要とする人が急増する可能性があることなどを背景に、上記のような目的で新サービスが創設される予定です。
ちなみに実施主体は市町村となり、「地域密着型サービス」として位置づけられるとのことです。
「通所+訪問」新サービス創設に期待すること
介護サービスを利用する側にとっては、サービスの選択肢が増えることが最大のメリットです。
ご利用者の生活スタイルに合わせたサービスの選択肢が増えることにより、より地域で安心して生活できる環境が作り出せるのであれば、サービス事業所側である私も、大いに期待したいところです。
ただ新サービス創設にあたって一番期待(お願い)したいことは...
ポイント
ご利用者側にも事業所側にも分かりやすい制度設計にしてもらいたいこと
介護保険サービスは時代の変化やニーズに合わせて、たくさんのサービスが提供されるようになりました。先ほども申し上げたように、選択肢が増えることはとても良いことだと思います。
しかし、サービスが増えるにつれ、制度が複雑化し分かりにくいという事実もあります。
新サービス創設となれば、まずは担当するケアマネが制度を理解する必要があり、そのサービスを利用するメリットをご利用者に説明できなければなりません。
制度が複雑になるほど、理解することが困難になり、結果として既存のサービス利用に留まってしまう可能性があります。
ぜひ、今回の「通所+訪問の新サービス」についてはわかりやすい制度になることを期待します。
「通所+訪問」新サービス創設の疑問点
現行のサービスで、すでに「通所+訪問+短期入所」を組み合わせた小規模多機能型居宅介護があります。
単純に「通所+訪問」という新サービスであれば、既存の小規模多機能型居宅介護から、短期入所を除いただけのサービスになります。
ポイント
短期入所を必要としない小規模多機能型居宅介護の利用者は、新サービスへ流れてしまうのではないか
小規模多機能型居宅介護は、基本的にその事業所のサービスしか利用できません。他のショートステイを利用してみたい、入所を希望する施設のショートを体験しておきたいと考える利用者であれば、小規模多機能型居宅介護を利用するメリットはありませんので、新サービスへ流れる可能性が高くなるというわけです。
また、職員においても小規模多機能型居宅介護での仕事で夜勤がネックで悩んでした方もいると思います。
ポイント
小規模多機能型居宅介護で悩んでした職員が新サービスへ流れる可能性がある
実際に夜勤をしていなくて、夜勤ができないことに負い目を感じていた職員は、選択肢の一つとして新サービスへの転職を考えるかもしれません。
「通所+訪問」新サービス創設に係る問題点
新サービスに創設にあたり、介護人材不足にさらに拍車がかかる可能性があります。
とりわけ訪問介護事業所は、介護事業所の中でも特に人材不足となっています。
公益財団法人「介護労働安定センター」が実施した調査によると、8809事業所が回答した中で、人材不足を職種別にみると訪問介護員が80.6%と高く、施設で働く介護職員は64.4%、看護職員は44.7%でした。
また、職種別で65歳以上の人の割合を見ると、理学療法士や作業療法士などが1.7%だったのに対し、ホームヘルパーなど訪問介護員が最も高い25.4%に上り、訪問介護員の高齢化も懸念されています。
ポイント
訪問介護員(ヘルパー)の人材難が加速する可能性がある
既存の訪問介護事業所が、深刻な人材難になる可能性があります。
通所+訪問」新サービス創設に係る気になる点
気になる点としては、ケアマネジメントをどのように展開していくのかという点です。
既存の小規模多機能型居宅介護では事業所内部のケアマネがケアマネジメントを担当していました。
ポイント
ケアマネジメントを担うのは誰になるのか?
今後の議論に注目していきたいと思います。
通所+訪問」新サービス創設 今後の動き
運営基準、人員基準、介護報酬など重要なことはこれから決定していきます。
2023年の社会保障審議会で議論される予定です。今回の新サービス創設は、2024年介護保険制度改正の大きな注目ポイントになりそうです。今後も新しい情報が出てきたら、後悔していきたいと思います。