こんにちは、社会福祉士のほしくずです。
高齢者の増加に伴い、介護サービスの需要が拡大する中、介護職員の待遇向上が業界全体の焦点となっています。
厚生労働省が発表した来年度の介護報酬改定では、全体で1.59%のプラス改定が見込まれ、これにより介護職員の賃上げが期待されています。
今回の改定には、処遇改善のための具体的な施策も含まれており、その効果により実質的な改定率は2.04%となります。本記事では、待ち望まれた介護職員の給与向上がどのように実現されるのか、そして業界に与える影響について詳しく探っていきます。
介護報酬改定とは?
介護報酬改定とは、介護保険制度において、介護サービスを提供する事業者に対して支払われる報酬の改定のことです。原則として3年に1回、介護保険制度の見直しと財政状況を踏まえて、厚生労働省が実施しています。
介護報酬改定の目的は、以下の3つです。
ポイント
- 適切なサービスの提供と質の向上
- 介護職員の処遇改善
- 介護事業者の経営改善
介護報酬は、介護サービスの内容や利用者の状態によって、単位数と単価が定められています。単位数とは、介護サービスの1回あたりの量を示すもので、単価とは、1単位あたりの報酬額を示すものです。
介護報酬改定では、単位数や単価の改定が行われます。単位数の改定では、介護サービスの質の向上や、利用者の状態に応じたサービスの提供を促進するために、増額される場合や減額される場合があります。単価の改定では、介護職員の処遇改善や、介護事業者の経営改善を図るために、増額される場合があります。
2 024年度介護報酬改定では、プラス改定となる見込みです。これは、介護保険制度の利用者数や費用の増加が見込まれること、また、介護職員の処遇改善を図るためであることが理由として挙げられます。
プラス改定により、介護現場では、介護職員の増員や処遇改善、サービス内容の充実などが期待されています。また、利用者にとっては、より質の高い介護サービスを受けられるようになることが期待されています。
介護報酬プラス改定の背景
今回のプラス改定の背景としては、次の2点があげられます。
ポイント
●介護サービス需要の増加と高齢者の増加に伴う課題
●介護職員の給与が他業種に比べて低く、人材流出の懸念
背景①:介護サービス需要の増加と高齢者の増加に伴う課題
上記のグラフは、厚生労働省の『介護分野の最近の動向』から引用したものです。
高齢者の急増に伴い、我が国では介護サービスの需要が飛躍的に拡大しています。
高齢社会は進展する一方で、高齢者の中には介護が必要な方々が増加しており、そのために適切な介護サービスがますます必要とされています。
この社会構造の変化は、介護職員の役割がより重要になる一方で、新たな課題も浮き彫りにされています。
介護職員の不足や賃金の低さが、高品質かつ持続可能な介護サービスの提供を脅かす要因となっており、これらの問題に対処する必要が急務となっています。
背景②:介護職員の給与が他業種に比べて低く、人材流出の懸念
介護職員は今後、2025年度には243万人、2040年度には280万人必要になると見込まれていて、このままでは人手不足で介護保険のサービスが維持できなくなるおそれがあります。
人材の確保が進まない理由の1つは介護職員の給与が低いことです。 2022年の厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」で賞与込みの給与を比較したところ、すべての産業の平均が月に36万1000円なのに対し、介護職員は月に29万3000円で、全産業の平均よりも6万8000円低くなっています。
処遇改善のための加算などの対策で介護職員の給与は10年前と比べて4万円近く上がりましたが、他の職種で賃上げの動きが相次ぐ中で、介護業界の給与は相対的に低い状態が続いています。
介護報酬プラス改定で最終調整
介護報酬は3年ごとに見直され、事業者が提供する介護サービスに対する支払いに影響を与える重要な要素です。この報酬が介護職員の給与の原資となっており、今回の改定は待遇向上に向けた大きな一歩となります。
現在判明している中身としては、次の2点です。
ポイント
●介護職員の処遇改善として0.98%を上乗せした全体で1.59%のプラス改定
●介護職員の処遇改善のための加算を一本化することによる賃上げ効果が0.3%相当見込まれる
高齢者の介護需要が増加する中、介護職員の給与が他業種に比べて低くなり、人材流出が懸念されていました。
厚生労働省は、これに対応すべく、介護職員の処遇改善に焦点を当て、改定率に0.98%の上乗せを行います。これにより、全体的な改定率が1.59%となり、2000年以降で2番目に高い引き上げ率となる見通しです。
また、複数ある介護職員の処遇改善のための加算を一本化することにより、賃上げ効果が0.3%相当見込まれ、総合的な改定率は2.04%に達します。介護職員の待遇向上が実現すれば、業界全体のモチベーション向上とともに、質の介護サービスの提供が期待されます。
介護報酬プラス改定がご利用者に与える影響
プラス改定によるご利用者への影響としては、プラス改定により介護現場では、介護職員の増員や処遇改善、サービス内容の充実などが期待されています。
これにより、利用者は、より質の高い介護サービスを受けられるようになると考えられます。
具体的な内容としては以下のようなことが考えられます。
ポイント
- 介護職員の増員により、一人ひとりの利用者への対応がより丁寧になる
- 介護職員の処遇改善により、介護職員のモチベーションが向上し、より質の高いサービス提供につながる
- サービス内容の充実により、利用者のニーズに応じたサービスを受けられるようになる
なお、プラス改定によるご利用者への影響は、介護サービスの種類や利用者の状態によっても異なります。具体的な内容について、今後の厚生労働省等の発表などを確認し、ご利用者へ丁寧に説明していく必要があります。
2024年度介護報酬改定、1.59%のプラス改定が決定(R5.12.21追記)
2023年12月20日、政府は来年度の介護報酬改定をめぐり、全体の改定率を1.59%に正式決定しました。これは、2000年度の制度創設以降、2番目に高い引き上げ率となります。
今回の改定では、介護職員の処遇改善のために0.98%を充当します。残りの0.61%は、各サービスの基本報酬や処遇改善以外の加算などに配分されます。
また、処遇改善加算の一本化による効果や食費・居住費などの「基準費用額」の引き上げにより、プラス0.45%相当の効果が追加的に生じると想定されています。
厚生労働省の武見敬三大臣は、「介護現場で働く人の処遇改善を着実に進めつつ、サービスごとの経営状況の違いも踏まえたメリハリある対応を行う」と述べました。
この改定について、介護・福祉人材の確保、育成、定着に注力する「介護人材政策研究会」の天野尊明代表理事は、「介護従事者の処遇改善がテーマとなって、過去有数の改定率が示されたことは非常に意義深い」と評価する一方で、「改定率の大半を占める賃上げ部分(0.98%)を除けば、残す0.61%で経営戦略の立て直しが求められるという厳しい現実がある」と指摘しました。
今回の改定は、介護職員の処遇改善を進めるための大きな一歩となりました。しかし、今後も継続的な取り組みが必要であることは間違いありません。
まとめ
介護報酬改定はプラス改定に決まりました。
今回の介護報酬プラス改定は、介護業界にとっては明るい兆しといえます。
しかし、課題は依然として根深いものがあります。介護サービスの提供を支えるためには、待遇向上だけでなく、人材確保や労働環境の改善が欠かせません。
これらの課題に対処することで、将来的な介護サービスの安定的な提供が期待されます。
介護報酬改定に関しては、新しい情報に目を向けていきましょう。