こんにちは、社会福祉士のほしくずです。
2024年度介護報酬改定の概要が明らかになり、報酬改定に向けて準備を進めている頃だと思います。
今回は、介護報酬改定に係る事業所の人員、設備及び運営基準等の主な改正内容についてまとめていきます。
この改正で特に準備が必要なのが、協力病院との医療連携に関する事項だと思います。内容を把握し、早めに準備を進めていきましょう。
人員、設備及び運営基準等に関する主な改正内容
まずは、主な改正内容(特別養護老人ホーム)について確認していきましょう。
主な内容は以下のとおりです。
主な改正内容
①緊急時等における対応方法の定期的な見直しの義務付け
②ユニットケアの質の向上のための体制の確保
③協力医療機関との連携体制の構築
④新興感染症発生時等の対応を行う医療機関との連携
⑤介護現場の生産性の向上
⑥「書面掲示」規制の見直し
⑦管理者の兼務範囲の明確化
それぞれの内容について確認していきましょう。
主な改正内容①:緊急時等における対応方法の定期的な見直しの義務付け(3年の経過措置)
入所者への医療提供体制を確保する観点から、介護老人福祉施設等があらかじめ定める緊急時等における対応方法について、配置医師及び協力医療機関の協力を得て定めることとなりました。
また、1年に1回以上、配置医師及び協力医療機関の協力を得て見直しを行い、必要に応じて緊急時等における対応方法の変更を行わなければならないことも含まれています。
配置医以外に協力医療機関の協力を得る必要があります。これには、緊急時に相談を受ける体制の確保や受診を受け入れること、入院が必要と判断された場合は原則入院を受け入れることなどが含まれています。
総合病院などが併設する事業所にとっては、さほど大きな問題にならないと思いますが、小さい法人や山間部や入院が可能な医療機関が近隣にない事業所にとっては、大きなハードルとなります。
主な改正内容②:ユニットケアの質の向上のための体制の確保(努力義務)
ユニットケアの質向上のための体制を確保する観点から、ユニット型施設の管理者は、ユニットケア施設管理者研修を受講するよう努めなければならないこととなりました。
ユニットケア施設(ユニット型指定介護老人福祉施設、ユニット型指定地域密着型介護老人福祉施設、ユニット型指定短期入所生活介護事業所その他のユニットケア(居宅に近い居住環境の下で、居宅における生活に近い日常の生活の中で行われる生活単位と介護単位を一致させたケアをいう。以下同じ。)を実施している施設)の管理者に対し、ユニットケア施設管理者研修を実施することにより、ユニットケア施設の職員が入居者又は利用者一人一人の意思及び人格を尊重し、入居又は利用前の居宅における生活と入居又は利用後の生活が連続したものとなるように配慮しながら、各ユニットにおいて入居者又は利用者が相互に社会的関係を築き、自律的な日常生活を営むことを支援することができるよう、ユニットケア施設管理者が自らの役割やユニットリーダーの役割を理解すること、並びにユニットリーダーによるケア及びマネジメントを支援・促進するための管理者のあり方について理解することを目的とする。
厚生労働省ホームページより引用
研修の詳細は、一般社団法人「日本ユニットケア推進センター」のホームページをご確認ください。
主な改正内容③:協力医療機関との連携体制の構築
高齢者施設内で対応可能な医療の範囲を超えた場合に、協力医療機関との連携の下で適切な対応が行われるよう、在宅医療を担う医療機関や在宅医療を支援する地域の医療機関等と実効性のある連携体制を構築するために以下のような対応が必要となります。
ポイント
①入所者の病状が急変した場合等において、医師又は看護職員が相談対応を行う体制を常時確保していること。
②診療の求めがあった場合において、診療を行う体制を常時確保していること。
③入所者の病状の急変が生じた場合等において、当該施設の医師又は協力医療機関その他の医療機関の医師が診療を行い、入院
を要すると認められた入所者の入院を原則として受け入れる体制を確保していること。
④1年に1回以上、協力医療機関との間で、入所者の病状の急変が生じた場合等の対応を確認するとともに、当該協力医療機関の
名称等について、当該事業所の指定を行った自治体に提出しなければならないこととする。
⑤入所者が協力医療機関等に入院した後に、病状が軽快し、退院が可能となった場合においては、速やかに再入所させることがで
きるように努めることとする。
その後に発出された解釈通知(案)にて、③の要件については「必ずしも専用の病床を確保していなくても差し支えなく、一般的に地域で在宅療養を行う人を受け入れる体制が確保されていればよい」とされました。
また届け出に関する様式も公表され、併せて経過措置期間中の進捗状況についても記載する欄が設けられています。その中では、「医療機関との取り決めが困難だった理由」「1年以内に協議する予定の医療機関」などを記載することとなっています。
協力医療機関連携加算
上記の内容に加えて、下記の要件を満たす場合に「協力医療機関連携加算」が算定できます。
算定要件
〇協力医療機関との間で、入所者等の同意を得て、当該入所者等の病歴等の情報を共有する会議を定期的に開催していること
(1) 協力医療機関が上記①~③の要件を満たす場合 100単位/月(令和6年度) 50単位/月(令和7年度~)(新設)
(2) それ以外の場合 5単位/月(新設)
主な改正内容④:新興感染症発生時等の対応を行う医療機関との連携
新興感染症の発生時等に、施設内の感染者への診療等を迅速に対応できる体制を平時から構築するため、あらかじめ、第二種協定指定医療機関との間で、新興感染症の発生時等の対応を取り決めるよう努めることとされました。
ポイント
①新興感染症の発生時等に感染者の診療等を実施する医療機関(協定締結医療機関)との連携体制を構築していること。
②上記以外の一般的な感染症(※)について、協力医療機関等と感染症発生時における診療等の対応を取り決めるとともに、当該
協力医療機関等と連携の上、適切な対応を行っていること。
※ 新型コロナウイルス感染症を含む。
③感染症対策にかかる一定の要件を満たす医療機関等や地域の医師会が定期的に主催する感染対策に関する研修に参加し、助言や
指導を受けること。
高齢者施設等感染対策向上加算
感染対応に関する取り組みを評価する加算が新たに創設されました。
算定要件
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)
○ 感染症法第6条第 17 項に規定する第二種協定指定医療機関との間で、新興感染症の発生時等の対応を行う体制を確保していること。
○ 協力医療機関等との間で新興感染症以外の一般的な感染症の発生時等の対応を取り決めるとともに、感染症の発生時等に協力医療機
関等と連携し適切に対応していること。
○ 診療報酬における感染対策向上加算又は外来感染対策向上加算に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会が定期的に行う院内感
染対策に関する研修又は訓練に1年に1回以上参加していること。
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ)
○ 診療報酬における感染対策向上加算に係る届出を行った医療機関から、3年に1回以上施設内で感染者が発生した場合の感染制御等
に係る実地指導を受けていること。
〇高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ) 10単位/月(新設)
〇高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ) 5単位/月(新設)
新興感染症等施設療養費
施設内療養を行う高齢者施設等への対応について、新たな加算が創設されました。
ポイント
○ 新興感染症のパンデミック発生時等において、施設内で感染した高齢者に対して必要な医療やケアを提供する観
点や、感染拡大に伴う病床ひっ迫を避ける観点から、必要な感染対策や医療機関との連携体制を確保した上で感染
した高齢者を施設内で療養を行うことを新たに評価する。
○ 対象の感染症については、今後のパンデミック発生時に必要に応じて指定する仕組みとする。
注意したいのが、「現時点において指定されている感染症はない」ということです。
算定要件
入所者等が別に厚生労働大臣が定める感染症※に感染した場合に相談対応、診療、入院調整等を行う医療機関を確保し、かつ、当該感染症に感染した入所者等に対し、適切な感染対策を行った上で、該当する介護サービスを行った場合に、1月に1回、連続する5日を限度として算定する。
〇新興感染症等施設療養費 240単位/日(新設)
主な改正内容⑤介護現場の生産性の向上(3年の経過措置)
利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会設置の義務付け、介護現場の生産性向上の取組を推進する観点から、現場における課題を抽出及び分析した上で、事業所の状況に応じた必要な対応を検討し、利用者の尊厳や安全性を確保しながら事業所全体で継続的に業務改善に取り組む環境を整備するため、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の設置を義務付ける。
生産性向上推進体制加算
介護ロボットやICT等のテクノロジーの活用促進するために新たな加算が創設されました。
ポイント
〇介護現場における生産性の向上に資する取組の促進を図る観点から、介護ロボットやICT等のテクノロジーの導入後の継続的なテクノロジーの活用を支援するため、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の開催や必要な安全対策を講じた上で、見守り機器等のテクノロジーを1つ以上導入し、生産性向上ガイドラインの内容に基づいた業務改善を継続的に行うとともに、一定期間ごとに、業務改善の取組による効果を示すデータの提供を行うことを評価する新たな加算を設けることとする。
○ 加えて、上記の要件を満たし、提出したデータにより業務改善の取組による成果が確認された上で、見守り機器等のテクノロジーを複数導入し、職員間の適切な役割分担(いわゆる介護助手の活用等)の取組等を行っていることを評価する区分を設けることとする。
今まで導入経験のない施設には、少しハードルが高い内容となっています。
算定要件
生産性向上推進体制加算(Ⅰ)
○ (Ⅱ)の要件を満たし、(Ⅱ)のデータにより業務改善の取組による成果(※1)が確認されていること。
○ 見守り機器等のテクノロジー(※2)を複数導入していること。
○ 職員間の適切な役割分担(いわゆる介護助手の活用等)の取組等を行っていること。
○ 1年以内ごとに1回、業務改善の取組による効果を示すデータの提供(オンラインによる提出)を行うこと。
生産性向上推進体制加算(Ⅱ)
○ 利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の開催や必要な安全対策を講じた上で、生産性向上ガイドラインに基づいた改善活動を継続的に行っていること。
○ 見守り機器等のテクノロジーを1つ以上導入していること。
○ 1年以内ごとに1回、業務改善の取組による効果を示すデータの提供(オンラインによる提出)を行うこと。
〇生産性向上推進体制加算(Ⅰ) 100単位/月
〇生産性向上推進体制加算(Ⅱ) 10単位/月
主な改定内容⑥:「書面掲示」規制の見直し
事業所内での「書面掲示」を求めている事業所の運営規程の概要等の重要事項について、インターネット上で情報の閲覧が完結するよう、「書面掲示」に加え 、原則としてウェブサイトに掲載することを令和7年度から義務付けられます。
主な改正内容⑦:管理者の兼務範囲の明確化
提供する介護サービスの質を担保しつつ、介護サービス事業所を効率的に運営する観点から、管理者が兼務できる事業所の範囲について、同一敷地内における他の事業所、施設等ではなくても差し支えない旨を明確化する。
まとめ
今回の記事では、以下の内容について確認しました。
主な改正内容
①緊急時等における対応方法の定期的な見直しの義務付け
②ユニットケアの質の向上のための体制の確保
③協力医療機関との連携体制の構築
④新興感染症発生時等の対応を行う医療機関との連携
⑤介護現場の生産性の向上
⑥「書面掲示」規制の見直し
⑦管理者の兼務範囲の明確化
上記の内容とともに、令和3年度の改正で経過措置となっていた内容についても確認が必要になります。
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【令和6年度義務化】介護保険制度改正で実施が義務付けられる内容6選まとめ:令和3年度改正では経過措置だった取り組み
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年度末の忙しい時期だと思いますが、報酬改定に向けて準備を進めていきましょう。